女性の予防と治療
腹圧性尿失禁の予防と治療
腹圧性尿失禁の主な治療法には、体操・薬・手術があります。年齢とともに尿もれがさらにひどくなることがあります。日常生活での予防はもちろん、症状のある方は、快適な毎日を取り戻すため思い切って専門医に相談することをお勧めします。
予防に骨盤底筋体操
骨盤底筋体操は、日常生活の中で誰でもできる体操です。産後の尿もれや、比較的軽い尿もれの人には有効です。現在尿もれがない人も、将来の予防のために始めるとよいでしょう。
正しい方法で毎日続けることが大切で、2~3か月で効果が現れてきます。肥満ぎみの人は体重を減らせばさらに効果があります。3か月たっても効果が現れない場合は、専門医に相談しましょう。
アドバイス
1日3~5回に分けて10~20分間行います。テレビのコマーシャルの時間、トイレに入る度と生活習慣にするのが長続きさせるコツです。
締める方法が分からなければ尿を途中で止めてみて、それと同じ感覚でやってみます。お風呂に入った時、左手をお腹に、右手の指を肛門の脇において、お腹に力が入らずに肛門がギュッと締まっていることを確認するのも1つの方法です
骨盤底筋体操は産後すぐには行いません。産後1~2週間して、会陰切開などの傷の痛みが回復してから始めます。
間違った体操を続けると、効果がないばかりか、病状を悪化させることがあります。専門医などに相談し、正しい指導を受けて行ってください。
仰向けの姿勢で
- 仰向けに寝て足を肩幅に開き膝を少し立てる。
- 体の力を抜き肛門と膣を締め、締めたまま10秒間。(もし途中で力が抜けてしまったら、また締めなおす。)(筋肉が強くなれば締め続けられるようになる。)
- その後50秒間は肛門、膣をゆるめて力を抜く。
- 仰向けは体を最もリラックスさせやすい。朝晩布団の中でも行なえる。
座った姿勢で
- 背筋を伸ばして座り、顔は前を向く。
- 床につけた両足は肩幅に開く。
- 肩の力を抜きお腹に力が入らないようにしながらゆっくりと肛門と膣を締める。
- 10秒間締め50秒間はゆるめる。
薬による治療
腹圧性尿失禁の軽症から中等症の方には、薬による治療があります。効果がなかなか得られない場合や、副作用を伴う場合は漫然と続けず、他の治療法を考えます。
β2受容体刺激薬
- 交感神経β受容体を刺激して、外尿道括約筋(横紋筋)の収縮力を強めます。
- 副作用として動悸、手の震え等がおきることがあります。
手術による治療
手術による治療は主に次の3つがあります。TVT手術は、現在最も多く行われている、身体への負担も少なく効果の高い方法です。
コラーゲン注入法
メスを使わずコラーゲンを尿道の周辺に注入し尿道を閉じやすくする方法です。日帰り手術も可能。効果が十分でなかったり再発した場合は、再度注入したり、他の手術を受けることもできます。
筋膜スリング手術
腹直筋筋膜を膀胱の頸の部分にあてて支える方法です。再発率が低く効果がすぐれていますが手術の負担がやや大きく最低でも1~2週間の入院が必要です。
こんな方は手術を!
・症状が重い ・体操で効果があがらない ・一気に治してしまいたい ・思い切りスポーツを楽しみたい
TVT手術
現在最も多く行われている、腹圧性尿失禁の新しい治療法です。専用テープを使って尿道を支え、お腹に力がかかった時に尿道を締めます。世界中でこれまでに50万人以上、日本でもすでに5000人以上の人がTVTT手術を受け尿もれのない快適な毎日をおくっています。
- 成功率は95%前後で再発の少ない手術です。
- 約30~40分で終了する負担の軽い手術です。
- 局所麻酔でも可能ですが病院によって静脈麻酔を併用したり下半身麻酔(腰椎麻酔)で行う場合があります。
- テープは心臓手術にも用いられる糸を編んだもので異物反応の心配が少ないとされています。
- 約1cmの切開が3か所で傷はほとんど残りません。
- 入院は病院により1泊~1週間。アメリカでは日帰りでも行われています。