本記事では、前立腺肥大症のホルモン療法について、わかりやすく解説します。泌尿器科の医師監修のもと情報をお伝えしますので、安心してご覧ください。
ホルモン療法がなぜ前立腺肥大に効くのか、どんなリスクがあるのかについても、専門用語を使わずに解説します。
前立腺肥大で尿の出が悪く困っている、なるべく手術をせずに症状を改善したいなど、お悩みの方はぜひご覧ください。
前立腺肥大症のホルモン療法とは?
ホルモン療法とは、男性ホルモンの分泌・働きを調整し、前立腺肥大の症状を改善する治療法です。主に薬を飲むことで改善を目指します。
前立腺肥大のメカニズムは、未だ100%解明されていません。現在は男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることが主な原因と考えられています。
特に男性ホルモンの分泌が与える影響が大きいため、ホルモン療法では、薬により男性ホルモンの分泌・働きを調整します。
前立腺肥大症のホルモン療法に用いられる薬は主に2つ
前立腺肥大症の薬で、男性ホルモンに働きかける薬は、主に以下の2つです。
- 5α還元酵素阻害薬
- 抗男性ホルモン薬
5α還元酵素阻害薬:アボルブなど
5α還元酵素阻害薬は、5α還元酵素という物質の働きを抑制する薬です。やや難しいため、噛み砕いて説明します。
まず、代表的な男性ホルモンに「テストステロン」があります。このテストステロンが多いほど、前立腺肥大への影響が大きいと考えられているのが現状です。
そして、5α還元酵素はこのテストステロンを、より強力な「ジヒドテストステロン」に変化させる働きがあります。
この変化を阻害することで、本来よりも前立腺肥大への影響を少なくし、症状を改善させるといったメカニズムです。
ただし、アボルブは皮膚から吸収される点にご注意ください。妊婦や子どもが触れてしまうと、子の成長に異常をきたす場合がありますので、必ず手の届かないところで保管しましょう。
抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン剤):プロスタールなど
抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンを抑制する薬です。精巣でテストステロン(代表的な男性ホルモン)がつくられるのを抑えて、血中のテストステロンが前立腺細胞へ吸収されることを防ぎます。
男性ホルモンが抑えられることで、肥大した前立腺が小さくなり、排尿障害が改善されることが多くある薬です。
ただし、症状の改善までに時間がかかること、勃起障害や性欲減退が見られることがある点にはご注意ください。
その他、前立腺肥大症で処方される薬の多くを、以下の記事にまとめております。あわせてご覧ください。
前立腺肥大症のホルモン療法に伴うリスク
ホルモン療法を行うと、男性ホルモンの量が低下します。男性ホルモンの量が低下すると、一般的には以下のようなリスクが発生します。
- 精液の量が減る・出なくなる
- 射精の感覚が鈍くなる
- 女性化乳房
- 乳房の痛み
など
まず、男性ホルモンの影響を大きく受けるのは性機能です。男性ホルモンが低下すると、精液の量や射精感に影響が出るケースが多くあります。
また、男性ホルモンが減り女性ホルモンが優位になることで、乳房がやや膨らみ、痛むなどの症状が現れることもあります。
健康被害には繋がりにくいものの、こういった副作用が気になるようでしたら、一度専門医に相談しましょう。
まとめ
前立腺肥大症で尿が出にくい、頻尿になるといった症状を改善するため、ホルモン療法を行うことがあります。
ホルモン療法は男性ホルモンの影響を少なくすることで、前立腺肥大を抑制させ、症状改善を目指す療法です。
副作用として、性機能障害や女性化乳房などの症状が出る場合があります。健康被害を及ぼす可能性は低いですが、生活するうえで気になる場合は専門医にご相談ください。
神楽岡泌尿器科では、このほかにも前立腺肥大症に関するお役立ち情報を多く公開しています。特に、検査が不安な方や、薬で本当に治るのか?といった疑問を解決する記事になっていますので、ぜひご覧ください。
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【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など