前立腺肥大症の薬による副作用について泌尿器科専門医が解説

前立腺肥大症の一部の薬には、副作用が現れることがあります。(個人差があります)

本記事では前立腺肥大によく用いられる薬の副作用から、副作用が出た時の対処法、注意点などをわかりやすく解説します。

知識がない状態で副作用に直面すると、対応を間違えてしまう可能性がありますので、正しい知識を身につけていきましょう。

前立腺肥大症の薬による副作用

前立腺肥大症の薬には、以下のような種類があります。それぞれの薬で副作用が異なるため、種類ごとに見ていきましょう。

  • α1受容体遮断薬(α1ブロッカー)
  • 5α還元酵素阻害薬・抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬)
  • PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬
  • 抗コリン薬

α1受容体遮断薬(α1ブロッカー):血圧に影響

  • 代表的な薬:ハルナール、ユリーフ、フリバスなど

α1受容体遮断薬は血管を拡張する作用があり、血圧低下を起こす可能性があります。立ち上がった際にめまいが起きたり、動悸が起きたりする可能性があるためご注意ください。

5α還元酵素阻害薬・抗アンドロゲン薬(抗男性ホルモン薬):性機能に影響

  • 代表的な薬(5α還元酵素阻害薬):アボルブ
  • 代表的な薬(抗アンドロゲン薬):ブロスタール

5α還元酵素阻害薬・抗アンドロゲン薬は両方とも男性ホルモンの量に影響を与える薬です。

そのため、勃起不全、射精障害、性欲低下、女性化乳房など性機能に関する副作用が多い特徴を持ちます。また、検査で用いるPSA値が約半分になるため、前立腺がんなどの検査をする予定がある場合はご注意ください。

PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬:痛みに影響

  • 代表的な薬:ザルティア

消化不良や頭痛、筋肉痛、背部痛など痛みを伴うことがあります。また、陰茎内の血流が促進され、持続的な勃起が起きてしまうこともあり、4時間以上続く場合はすぐに専門医に相談しましょう。

抗コリン薬:排尿・排便に影響

  • 代表的な薬:ベシケア

膀胱の収縮力を弱める薬なため、元々の収縮力が弱い方だと尿閉(尿が出ない状態)に繋がる可能性もあります。また、消化液の分泌が減り、腸の働きが悪くなることで便秘を招くことも少なくありません。

前立腺肥大症の薬で副作用が出た時の対処法

前立腺肥大症の薬で、副作用が出た場合はすぐに専門医にご相談ください。めまいなどが起きた場合は安静にし、回復を待ちます。

性機能の低下による健康被害は稀ですが、消化器系の副作用や痛み、血圧関係は別の病気を招いてしまう危険性もあります。決して自己判断することなく、副作用が出た場合は遠慮なく相談してください。

別の薬に変更することで、効果を維持しつつ副作用を起きにくくすることもできます。

薬の副作用で射精障害が起こる?

薬の副作用で射精障害が起きることがあります。射精の感覚が鈍くなる、精液の量が減る・出なくなるということも珍しくありません。

理由は、前立腺肥大の薬の中に、男性ホルモンを抑える仕組みのものが多いためです。副作用として射精障害・勃起不全などの副作用が見られます。

しかし、この副作用による健康被害が起こることはありません。あくまでも、影響するのは子作りをしたいなど特定の状況のみです。オーガズム自体は起こるため、性行為も可能です。

前立腺肥大の治療もしつつ、子作りもしたい場合は専門医にご相談ください。性交渉前に薬を飲まないなど、調整しながら治療を進めていくことになります。

前立腺肥大症の方は、かぜ薬にも注意が必要

かぜ薬の中には、副作用として膀胱の収縮力を弱めるものがあります。

前立腺肥大の状態で、膀胱が収縮すると、排尿困難や尿閉に繋がります。最悪の場合、腎臓病につながる可能性もありますので、ご注意ください。

その他、前立腺肥大に関するQ&Aは以下の記事に掲載しています。副作用以外にも多くの情報をお届けしていますのでぜひご覧ください。

まとめ

前立腺肥大症の薬は、その種類によりアプローチする箇所が異なります。血管を拡張したり、男性ホルモンの量を減らしたりと、前立腺を小さくするために投与しますが、副作用も起こり得るため注意しましょう。

特に血圧低下や性機能障害、排尿・排便トラブルが多く、場合によっては別の病気を招く引き金にもなりかねません。もし副作用が出た場合は、すぐに専門医に相談しましょう。

また、薬だけに頼らず排尿習慣トレーニングも行うことで、前立腺肥大の症状に対処できます。手術や薬以外でできる対処法については以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。

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