
前立腺肥大症の治療は、すべての方に同じ方法が選ばれるわけではありません。症状の強さや生活への影響、前立腺の大きさ、尿の勢い、排尿後に残る尿の量、合併症の有無などを確認し、経過観察・生活上の工夫、薬物療法、手術療法から適した方法を選びます。
症状が軽ければ経過観察になる場合もあります。一方、薬を続けても十分に改善しない場合や、尿閉などの合併症がある場合は手術が検討されます。
この記事では、前立腺肥大症の治療の流れと、薬・手術を選ぶ目安を泌尿器科医が解説します。
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など
前立腺肥大症の治療は症状と検査結果で決まる
前立腺が大きくても、排尿症状が軽く、生活に大きな支障がなければ、すぐに薬や手術が必要とは限りません。反対に、前立腺の大きさだけでは重症に見えなくても、尿の勢いが弱い、残尿が多い、夜間に何度も起きるなど、生活への影響が大きい場合は治療を検討します。
治療法を決める際は、症状の程度だけでなく、尿路感染、血尿、尿閉、膀胱結石、腎機能への影響なども確認します。自己判断で市販薬を使ったり、処方薬を中止したりせず、泌尿器科で排尿状態を調べることが大切です。
前立腺肥大症|治療前に行う主な検査
治療前には、前立腺肥大症以外の病気が隠れていないかを確認し、症状や排尿障害の程度を調べます。
症状の聞き取りと質問票
尿の勢い、排尿回数、夜間頻尿、残尿感などを確認します。国際前立腺症状スコア(IPSS)などの質問票を使い、症状の程度や生活への影響を数値で整理する場合もあります。
尿検査・血液検査・超音波検査
尿検査では、血尿や尿路感染の有無を確認します。必要に応じて血液検査(PSA検査)や超音波検査を行い、前立腺がんの可能性や前立腺の大きさなどを調べます。
尿流測定と残尿測定
尿流測定は、尿の勢いや排尿時間を確認する検査です。残尿測定では、排尿後に膀胱内へどの程度の尿が残っているかを超音波で調べます。これらの結果は、薬や手術を選ぶ重要な判断材料になります。
検査内容を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
前立腺肥大症の主な治療法
前立腺肥大症の治療は、大きく「経過観察・生活上の工夫」「薬物療法」「手術療法」の3つに分けられます。
経過観察・生活上の工夫
症状が軽く、尿閉や腎機能障害などの合併症がなければ、定期的に状態を確認しながら経過を見る場合があります。
日常生活では、過度な飲酒やカフェインの取りすぎ、長時間の座りっぱなし、体の冷え、便秘などを見直すと、排尿症状の軽減につながる場合があります。これらは症状への対策であり、肥大した前立腺を直接小さくする方法ではありません。また、水分を一律に制限すると脱水につながるため、持病や生活状況も含めて医師へ相談してください。
十分な水分補給や、適当なタイミングでのリラックスした排尿など、排尿習慣の改善も必要となります。
薬物療法
前立腺肥大症では、尿道周辺の筋肉緊張を緩めて尿を出しやすくする薬や、前立腺を縮小させて尿道への圧迫を和らげる薬などが使われます。
- α1遮断薬:前立腺や尿道周辺の筋肉を緩め、尿を出しやすくする
- PDE5阻害薬:前立腺や膀胱出口付近の筋肉緊張を緩め、骨盤内の血行改善により排尿症状の改善を目指す
- 5α還元酵素阻害薬:男性ホルモンの働きに作用し、肥大した前立腺の縮小を目指す
- 過活動膀胱治療薬:尿意切迫感や頻尿などがある場合に、排尿状態を確認したうえで併用を検討する
薬の効果や副作用、使用できない条件は種類によって異なります。詳しくは、前立腺肥大症の薬一覧と前立腺肥大症の薬で起こりうる副作用をご確認ください。
【関連動画】
前立腺肥大症は薬で治るのか?医師がよくあるお悩みに回答
手術療法
薬で十分な改善が得られない場合や、尿閉を繰り返す場合、前立腺肥大症に伴う肉眼的血尿が治療しても繰り返す場合、尿路感染・膀胱結石・腎機能障害などの合併症がある場合は、手術を検討します。
主な術式には、電気メスで肥大した組織を切除するTUR-P、レーザーで肥大した組織を核出するHoLEP、水蒸気を利用するWAVEなどがあります。適した術式は、前立腺の大きさ、年齢、全身状態、服用中の薬、希望する治療方法などによって異なります。
術式ごとの特徴は、前立腺肥大の手術について種類・適用レベル・術後の治療を詳しく解説で紹介しています。
前立腺肥大症の手術を検討する目安
次のような場合は、薬の変更だけでなく、手術を含めた治療の見直しが必要になることがあります。
- 薬を続けても尿の出にくさや残尿感が十分に改善しない
- 尿がまったく出ない尿閉を起こした、または繰り返している
- 前立腺肥大症に伴う肉眼的血尿が治療しても繰り返す、または尿路感染を繰り返している
- 膀胱結石や多量の残尿がある
- 腎臓や腎機能への影響が疑われる
- 薬の副作用などにより治療を継続しにくい
尿が出ない状態は早急な処置が必要です。我慢せず、速やかに医療機関へ相談してください。
神楽岡泌尿器科では日帰りHoLEPに対応しています
HoLEP(ホーレップ)は、尿道から内視鏡を入れ、ホルミウムレーザーを使って肥大した前立腺組織を核出する手術です。術後出血などの合併症が少なく、残存腺腫の増大よる症状の再発確率を少なくできます。神楽岡泌尿器科では日帰りHoLEPに対応しており、1000例以上のHoLEP手術を行っています。
ただし、すべての方が日帰り手術の対象になるわけではありません。前立腺の大きさ、症状、持病、服用中の薬、ご自宅での術後管理などを確認し、適応を判断します。
当院の治療内容は、前立腺肥大症「HoLEPの日帰り手術」についてと手術件数・診療実績をご覧ください。
【関連動画】
前立腺肥大症日帰り手術「HoLEP」について【専門医が解説】
薬を続けても十分に改善しない方や、手術を勧められたものの迷っている方は、検査結果や現在の治療内容を確認したうえで選択肢を整理することが大切です。受診すべきか迷う場合は、院長直通の無料メール相談をご利用ください。
まとめ
前立腺肥大症の治療は、症状の程度、生活への影響、前立腺の大きさ、尿の勢い、残尿、合併症などを踏まえて選びます。症状が軽ければ経過観察となる場合があり、治療が必要な場合は薬物療法から始めることが一般的です。
薬で十分な改善が得られない場合や、尿閉、前立腺肥大症に伴う治療抵抗性の肉眼的血尿、尿路感染、膀胱結石、腎機能障害などがある場合は、手術が選択肢になります。自分に適した治療を知るためにも、気になる排尿症状があれば泌尿器科で検査を受けましょう。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など



