おしっこを我慢することの健康影響と適切な排尿習慣​


「もう少ししたらトイレに行こう」「会議中だから」など、日常生活の中で、ついおしっこを我慢してしまうことはありませんか?
しかし、その小さな習慣が、あなたの膀胱や腎臓に大きな負担をかけているかもしれません。

この記事では、日常的におしっこを我慢しがちな方、そして頻尿や尿意切迫感など排尿に関する悩みを抱えている方に向けて、泌尿器科院長渋谷が、おしっこを我慢することが体に与える具体的な影響を徹底解説します。

人間はおしっこをどれくらい我慢できるの?

一般的に、私たちは膀胱に約150ml程度の尿が溜まると最初の尿意を感じ始め、少し我慢して300ml程度になってからトイレに行くことが多いです。

尿意を感じたからといって、すぐに排尿しなければならないわけではありません。膀胱の容量は約500ml程度とされており、この範囲内であれば、通常は身体に大きな影響なくおしっこを我慢できると考えられています。

しかし、膀胱の容量を超えて尿が溜まるまで無理に我慢するのは避けるべきです。仕事や作業に集中していると、ついつい尿意を後回しにしてしまいがちですが、「そろそろトイレに行こうかな」と感じたら、我慢しすぎないようにすることが大切です。強い尿意を感じるまで溜めてから排尿する習慣は、膀胱に負担をかけ、将来的な排尿トラブルにつながる可能性があります。

おしっこを我慢できなくなるメカニズムと理由

おしっこを我慢できなくなるメカニズムとは一体どのようなものなのでしょうか。詳しく説明していきます。

おしっこを我慢のメカニズム


私たちが排尿する際には、腎臓と膀胱が重要な役割を果たしています。体内の不要な老廃物は、血液を通して腎臓に運ばれ、そこでろ過されて尿として生成されます。生成された尿は、尿管という管を通って膀胱へと送られ、一時的に貯留されます。

膀胱は、風船のように伸縮自在な臓器であり、通常は約200mlから400ml、おおよそコップ2杯分程度の尿を溜めることができます。膀胱に一定量の尿が溜まると、その情報は神経を通じて脳へと伝達され、「おしっこをしたい」という尿意が生じます。

しかし、会議中や移動中など、すぐにトイレに行けない状況でおしっこを我慢する必要がある場合、脳から膀胱や尿道に対して「まだ排尿してはいけない」という抑制の信号が送られます。この信号を受け取ると、膀胱の出口や尿道を取り囲む筋肉が収縮し、尿道をしっかりと締め付けることで、膀胱内の尿が漏れ出すのを防ぎます。

おしっこを我慢できなくなる理由

おしっこを我慢できなくなる背景には、膀胱に貯留できる尿の物理的な限界を迎えるという直接的な要因の他に、「尿意切迫感」と呼ばれる、突如として襲ってくる抑えがたい強い尿意が存在します。この尿意切迫感は、以下のような様々な要因によって引き起こされると考えられています。

  • 過活動膀胱:膀胱への大きな負担がかかることで、膀胱の筋肉が過敏になり、尿が十分に溜まっていない状態でも尿意切迫感を感じることがあります。
  • 膀胱炎:膀胱や尿道が炎症を起こし、刺激されることで尿意切迫感が生じます。
  • 前立腺肥大症:前立腺が肥大することで尿道が圧迫され、尿意切迫感を伴うことがあります。

おしっこを我慢することが健康に与える3つの影響


おしっこを我慢すると健康にどんな影響があるのか説明していきます。

1、膀胱炎や尿路感染症のリスク

おしっこを我慢すると、膀胱炎や尿路感染症のリスクを高める可能性があります。主な理由は、細菌の繁殖を促し、膀胱の防御機能を低下させるためです。
通常、尿は腎臓で作られ、老廃物や体内の不要な物質を体外へ排出する役割を担っています。この尿の流れは、膀胱内に侵入した細菌を洗い流す自浄作用を持っています。しかし、おしっこを長時間我慢すると、膀胱内に尿が長時間滞留することになり、この自浄作用が十分に機能しなくなります。

2、膀胱の過度な拡張と機能低下

膀胱の許容量を超えて長期間にわたりおしっこを我慢し続けると、膀胱の筋肉が過度に引き伸ばされ、収縮力が低下し、膀胱の機能不全を引き起こす可能性があります。これは、排尿困難や残尿感といった症状につながり、膀胱内に尿が長く留まることで、細菌感染のリスクを高めます。

3、腎臓への影響と腎盂腎炎の可能性

おしっこを我慢する習慣は、膀胱だけでなく、より深刻な腎臓への影響、特に腎盂腎炎を引き起こす可能性があります。腎盂腎炎の原因となる細菌は大腸菌などの腸内細菌です。これらの細菌は尿の流れによって体外へ排出されますが、おしっこを長時間我慢することで、膀胱内で増殖した細菌が尿管を逆行し、腎臓へと到達するリスクが高まります。

「気持ちいいおしっこ」の習慣を持つことが大切

「おしっこを我慢するのは良くない」という情報から、尿意を感じるとすぐに排尿する習慣をつけてしまうのは逆効果です。大切なのは「気持ちいいおしっこ」の習慣を持つことです。

理想的な排尿間隔と1回の排尿量

一般的に、成人の正常な排尿回数は、1日5〜7回程度とされています。しかし、排尿回数には個人差が大きく、水分摂取量、食事内容、生活習慣、気温、精神的な状態など、様々な要因によって変動するのですがあくまでも平均的な回数です。

1回の排尿量としては、150〜400ml程度が目安とされています。膀胱に約150〜250ml程度の尿が溜まると、最初の尿意を感じ始めると言われています。健康な状態であれば、ある程度の尿量を膀胱に溜めてから、無理なく排尿することができます。

水分摂取の重要性と適切なタイミング

膀胱の健康を維持して「気持ちいいおしっこ」の習慣を持つためには、適切な水分摂取が非常に重要です。一般的に、成人の一日の水分摂取量の目安は約1.5〜2リットルとされています。

これは、飲み物だけでなく、食事に含まれる水分も考慮した量です。十分な水分を摂取することで、尿の量が確保され、膀胱内に侵入した細菌や老廃物をスムーズに洗い流す効果が期待できます。

また、排尿のタイミングも重要です。尿意を感じたら無理に我慢せず、適切なタイミングで排尿することが、膀胱に過度な負担をかけないための基本です。膀胱にしっかりと尿を溜めてから排尿することで、膀胱の収縮機能が正常に働き、残尿感を減らすことにも繋がります。

ご自身の膀胱内の尿量を把握して適切な排尿タイミングを知るためには、「排尿日誌」をつけるのがおすすめです。排尿の時間、量、尿意の程度、水分摂取量などを記録することで、自身の排尿パターンを客観的に把握し、より意識的に膀胱の健康管理に取り組むことができます。

排尿日誌を見てみる

膀胱トレーニングの方法と注意点

理想的な排尿を目指すためには膀胱トレーニングもおすすめです。膀胱トレーニングは、尿意を感じてもすぐにトイレに駆け込むのではなく、少しずつ排尿までの時間を意識的に延ばすことで、膀胱の容量を増やし、頻尿や尿意切迫感を改善していく方法です。

トレーニングの基本はシンプルで、「尿意を感じたら、まず5分程度我慢する」ことから始めます。最初は不安に感じるかもしれませんが、焦らず少しずつ慣れていきましょう。たとえ5分も我慢できなくても、心配はいりません。無理をして失敗するよりも、まずは自宅など、万が一漏れても問題のない状況から始めるのがおすすめです。

強い尿意を感じても慌てずに、深呼吸をしたり、意識を他のことに向けたりして気を紛らわせます。尿意を抑えるテクニックとして、足をクロスさせる、椅子に座る、椅子の縁におしっこの出口を軽く押し当てる、衣服の上から出口付近を手で押さえるなどの方法も試してみましょう。

おしっこを我慢しすぎたなと感じた時の対処法​

仕事中や生活リズムの乱れなどでどうしてもおしっこを我慢しすぎてしまったときもあるのではないでしょうか。そんなときの対処法を説明します。

自分の尿の状況を数値で把握する

おしっこを我慢しすぎた後に、かえって頻尿になったり、急な尿意に襲われるようになったりすることがあります。これは、膀胱が過敏になっているサインかもしれません。
膀胱の筋肉が過度に緊張していることが考えられるため、規則的な排尿を心がけ排尿日誌をつけることが改善策の1つです。

また、膀胱トレーニングを継続して行うことで再度膀胱の緊張感を和らげていくことにも繋がります。

夜間頻尿の対処法と生活習慣の見直し

夜間に何度もトイレに起きる夜間頻尿は、睡眠を妨げ、日中の活動にも支障をきたすつらい症状です。おしっこを我慢しすぎたことが直接的な原因となることは少ないと考えられますが、不規則な排尿習慣や生活習慣の乱れが間接的に夜間頻尿を悪化させる可能性はあります。

生活習慣を見直すことで、夜間頻尿の症状が改善することがあります。普段の食事で塩分を摂りすぎないことで水分摂取量の少なくすることができます。また、利尿作用のあるカフェインやアルコールは、特に寝る前は避けることも夜間頻尿の対処法に繋がります。

ストレスを軽減する時間を設ける

精神的なストレスや不規則な生活習慣は、自律神経のバランスを大きく乱し、それが排尿機能にも様々な影響を及ぼすことがあります。

私たちの体は、心と体が密接に結びついているため、精神的な負担が身体的な症状として現れることは珍しくありません。この状態が続くと、膀胱が過敏になったり、尿意を感じやすくなったりすることがあります。

まとめ

今回はおしっこを我慢することが体に与える具体的な影響を徹底解説しました。

おしっこを我慢することは、膀胱炎をはじめとする尿路感染症のリスクを高める可能性がある一方で、日常生活で一時的に生じる程度の我慢であれば、過度に心配する必要はありません。最も大切なのは、尿意を感じたら無理せず、適切なタイミングで排尿する習慣を身につけ、膀胱の健康を維持することです。

ご自身の排尿の量やパターンを把握するために、まずはご紹介した排尿日誌を活用し、排尿の記録をつけてみることから始めてみましょう。

もし、誰にも相談しにくいおしっこに関するお悩みをお抱えでしたら、当院(神楽岡泌尿器科)では、院長直通の無料メール相談も承っております。どうぞお気軽にご相談ください。

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さらに、当院の院長はオシッコスペシャリストとして、誰も教えてくれないオシッコの習慣・仕方について詳しく本にまとめています。

おしっこに悩む全ての人に捧げた本なので、お悩みの方は参考にしてみてください。

『気持ちいいオシッコのすすめ』
著者:渋谷秋彦