タグ別アーカイブ: 腹圧性尿失禁

排尿管理のポイント(1)

これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。

ADL(日常生活活動)の改善

移動の方法や生活の仕方に応じた生活環境や排泄用具を整え、できるだけ排泄の自立を目指します。

①ベッド上でおむつをあてて排尿している人でも、尿意があれば電動ギャッジヘッドで背中を起こし採尿器での練習をさせます。

IMG_20160524_1

②ベッドの端にひとりで座ることができる人には、高さが調節できる安定性のよいポータブルトイレを使い指導を行うと、自力で移動でき、足が床につくので排尿が楽になります。足が床につくことをレッグサポートと呼び、骨盤底筋群の弛緩により排尿反射が起こりやすくなります。

IMG_20160524_2

③なんとかトイレまで移動できる人に対しては、廊下やトイレの壁への手すりの設置、立ちしゃがみが楽な洋式トイレへの改造をおすすめします。

IMG_20160524_3

便秘の改善

便秘になると、腸内の便が膀胱を圧迫し、頻尿、さらに骨盤底筋群の弛緩を促し、腹圧性尿失禁につながります。また、排尿反射が起こりにくく、排尿困難をきたします。よって、下部尿路機能障害(LUTD)を訴える患者さんに接する時には、便秘の存在を念頭に入れておくことも必要です。

便秘の原因は、薬剤の影響などさまざまです。非活動的な生活も、腸の働きをにぶくさせるため便秘の原因となります。

IMG_20160524_4①ベッド上での足の屈伸運動やからだのねじり運動などによって腸の動きを促すことから始め、全身の活動性を高めていくような運動を徐々に増やしていくとよいでしょう。

②食物繊維の多い食品をとるとともに、肥満を防ぐことが大切です。例えば、有酸素運動である「骨盤底筋群体操」を生活習慣の中に取り入れて、毎日行うとよいでしょう。

③慢性的な便秘の場合には、安易に下剤を使わず、宿便や直腸周囲の硬便をまず摘便しましょう。肛門刺激になるとともに、怒責(腹圧をかけること)しやすくなり、便の通りも良くなります(浣腸は摘便をした後の方が効果的です)。

④朝、起床時に水分(水やお茶など)を100~150ml飲むことによって、便秘の予防になります。

⑤便秘に対する薬剤としては、便を柔らかくする酸化マグネシウム、大腸の運動を活発にするセンノシド、ピコスルファートナトリウムなどがあります。

関連記事

・排尿管理のポイント(2)

知っておきたいオシッコの話<腹圧性尿失禁>

治療法を知りたいあなたに

医療的対応には、病気によって運動療法、薬物療法、手術療法があります。その症状に応じて対応は異なってきます。排尿障害の種類および程度によって、全ての治療法が最善のものとなりうることを知っておいて下さい。対応が遅れると、膀胱機能の異常が進行し、その治癒に時間がかかるようになるので、早めに医師に相談しましょう。

尿失禁の種類:腹圧性尿失禁(診断名:真性腹圧性尿失禁)の治療法

①基本は前回ご紹介した骨盤底筋群体操です。

②この体操を継続して行い、3ヵ月後に効果が認められない場合。
a)もう一度骨盤底筋群の確認をして下さい。
b)専門医にご相談下さい。
c)過活動膀胱による切迫性尿失禁を合併している場合(混合性尿失禁)は尿失禁治療薬の内服が有効です。
d)内因性括約筋不全によるタイプの場合は専門医にご相談下さい。

用具類による対応策

●体操の効果が現れるまで、外出や運動の時には、軽失禁用ショーツや失禁量に応じたパッド、防水パンツ・メッシュパンツを着用すると安心です。

160405

 

 

腹圧性尿失禁に有効な『骨盤底筋群体操』

女性の尿失禁は腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、および両者の合併した混合性尿失禁に集約されます。
その中で腹圧性尿失禁(混合性尿失禁も含む)は女性の代表的な尿失禁であり、10人中2~4人に認められるといわれています。

腹圧性尿失禁に有効な『骨盤底筋群体操』の基本的な方法

骨盤底筋群の認識

腹圧性尿失禁に対する治療の基本といえます。ただ、体操を始める際は、骨盤底筋群(とくに肛門挙筋を介した膣括約筋)の認識が重要です。
認識方法として、現在勧められるのは以下のものです。

(a)排尿中に尿をとめる。
(b)膣に指を挿入し、膣を締めてみる。
(c)肛門を締め、さらに膣を体内に引き入れるようにする。
(d)腰かけた姿勢でビール瓶、あるいはコブシを膝または内ももで挟む。

(a)~(c)がむずかしい場合は、(d)の大腿四頭筋などで補助して膣括約筋を認識して下さい。要するに肛門より少し前方の筋肉が締まっている感覚がつかめればよいわけです。

骨盤底筋群体操の方法

160322_1
160322_3

①恥骨      ⑥膣括約筋
②クリトリス   ⑦外肛門括約筋
③外尿道括約筋  ⑧肛門
④尿生殖隔膜筋膜 ⑨肛門挙筋
⑤膣       ⑩大殿筋

 

 

 

 

3ヶ月たっても効果がみられない場合の対応

(a)骨盤底筋群(膣括約筋)の認識を再指導して下さい。
(b)薬物療法として尿道の圧を上昇させるα-アドレナリン作動薬(三環系坑うつ剤など)、坑コリン剤がありますが、体操との併用を原則として下さい。
(c)手術療法として膀胱頸部(尿道)スリング手術、コラーゲン尿道周囲注入療法などがあります。

 

知っておきたいオシッコの話<腹圧性尿失禁>

前向きな生活への発想転換

老化に伴って起こりやすい排尿障害があります。
例えば、間に合わなくておもらしをする、夜中に何回もオシッコに起きる、
トイレに立ってもなかなか出にくくて困ってしまう、などの経験をお持ちの方も多いと思います。

もう年だから、恥ずかしいからとあきらめてはいませんか?
でも、ちょっと待って下さい。
自分のからだの状態や日常生活の過ごし方を見直して、正しい対応策をとれば、元気にいきいきと暮らしていくことができます。

ここでは、高齢者によくみられるオシッコの問題に対して、考え方のちがいによって生活状況が大きく左右されることについてみていきましょう。

上手に解決できなかった人の話①

Mさんは66歳の女性です。夫とゴルフに通うのが趣味ですが、ボールを打った瞬間などにたまに下着をぬらしてしまうことがありました。パッドなどを付けて対処していましたが、気になって集中できず、楽しく感じられません。だんだんゴルフどころか外出するのさえ面倒になってきました。

でも病院に行くのも恥ずかしいし、誰にも相談できません。
「もう年だし、仕方がないのかしら・・・」
Mさんは家に閉じこもりがちになってしまいました。

腹圧性尿失禁の自己チェック

このテストは、腹圧性尿失禁の治療効果の判定のために作成され、世界的に共通化されたテストですが、おもらしの状態を知るための自己診断法としても活用できます。

160126_2

160126_3

160126_1

咳、手洗いの途中で尿意を感じて多量の尿失禁を認めた場合、
過活動膀胱を疑いましょう。

※ICS=International Continence Society の略。国際禁制学会。

腹圧性尿失禁の治療と予防についてはコチラをご覧ください