前立腺肥大と男性ホルモンの関係|テストステロン・DHTの影響を泌尿器科医が徹底解説

「前立腺肥大症と診断されたけれど、男性ホルモンが原因って本当?」「ホルモンバランスを整えれば予防できるの?」

前立腺肥大症の正確な原因は完全には解明されていませんが、加齢男性ホルモンが深く関与していることは、医学的に広く認められています。

特に、男性ホルモンの代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)は、前立腺を肥大化させる重要な原因物質です。

この記事では、前立腺肥大症における男性ホルモンの役割や、病気の進行メカニズム、そしてホルモンバランスを整えるための生活習慣までを、泌尿器科のせんもが詳しく解説します。

1. 男性ホルモンが前立腺肥大を引き起こすメカニズム

前立腺肥大症の発症には、加齢男性ホルモンという二つの要因が必須とされています。

テストステロンの役割とDHTへの変換

前立腺肥大の直接的な原因は、男性ホルモンそのものではなく、その代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)です。

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、前立腺に取り込まれると、5α還元酵素という酵素の働きによって、DHTに変換されます。このDHTが、前立腺組織内の受容体と結合し、細胞の増殖を促すことで前立腺が徐々に肥大していくのです。

ホルモンバランスの変化

前立腺肥大症は、単にDHTの量だけでなく、加齢に伴うホルモンバランスの変化も深く関係しています。

高齢化と共に男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が低下する一方、相対的に女性ホルモン(エストロゲン)が増加します。このホルモンバランスの崩れが、前立腺組織を増殖させ、肥大化をさらに促進すると考えられています。

ホルモン作用を裏付ける医学的根拠

男性ホルモンが前立腺肥大に関与していることの証拠として、以下の事実が挙げられます。

  • 若い時期に両側の睾丸を摘出した男性には、前立腺肥大症が発症しない。
  • 男性ホルモンを抑制する薬(抗アンドロゲン薬など)によって、前立腺が小さくなる。

このメカニズムを標的とした薬物療法は、前立腺肥大症の主要な治療法の一つとなっています。

2. 前立腺肥大が進行する仕組み

前立腺肥大症は自然に治ることはなく、放置すると段階的に進行する傾向にあります。

遺伝・生活習慣がもたらす影響

前立腺肥大症の根本的な原因は「加齢」と「男性ホルモン」ですが、以下の要因も進行に影響します。

遺伝家族歴がある場合、前立腺肥大症を発症しやすいことが分かっています。
肥満・生活習慣病肥満、高血圧、糖尿病などは、前立腺肥大症のリスクを高めます。特に肥満は、ホルモンバランスの乱れや慢性的な炎症を引き起こし、前立腺の肥大を促進する可能性があります。

前立腺細胞の増殖と肥大化

前立腺の肥大は、尿道を取り巻く内腺という部分で起こります。この内腺がDHTの作用によって増殖し、肥大することで、尿道を物理的に圧迫して排尿困難を引き起こします。

進行段階は大きく3つに分けられます。

  1. 膀胱刺激期:頻尿、尿意切迫感など、排尿の回数が増える時期。
  2. 残尿発生期:尿を出しきれなくなり、膀胱に尿が残るようになる時期。
  3. 慢性尿閉塞期:完全に尿が出なくなる尿閉状態が慢性化し、腎機能障害につながる危険な時期。

3. 男性ホルモンバランスを整える生活習慣

前立腺肥大症を予防し、症状の進行を抑えるためには、ホルモンバランスを良好に保つ生活習慣が重要です。

運動と筋力維持(過度なトレーニングに注意)

筋力トレーニング適度な筋トレはテストステロンのバランスを整える可能性があります。特に、下半身の大きな筋肉を使うスクワットは、テストステロンの減少を抑え、血流を良くする効果が期待できます。
有酸素運動ウォーキングなどの有酸素運動は、血流を改善し、生活習慣病を予防することで前立腺の健康をサポートします。
注意点長時間の自転車乗りは、サドルが前立腺を圧迫するため避けるべきです。また、過剰な腹圧がかかる筋トレも、前立腺に負担をかける可能性があるため、無理のない範囲で行いましょう。

食事(亜鉛・大豆イソフラボンなどの栄養素)

積極的に摂るべき食品大豆製品(豆腐、納豆など)に含まれるイソフラボンは、前立腺の肥大を抑制する効果が期待できます。トマトやスイカのリコピン、カキやナッツに豊富な亜鉛も前立腺の健康をサポートします。
控えるべき食品赤肉などの高脂肪食、高塩分食、カフェインや辛い食品の過剰摂取は、膀胱を刺激して症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

ストレス管理と睡眠

ストレス長期的なストレスはホルモンバランスを乱し、前立腺に悪影響を与えることがあります。趣味やリラックスできる時間を作り、ストレスをためないようにしましょう。
睡眠十分な睡眠は、ホルモンバランスを整える上で不可欠です。質の良い睡眠を確保しましょう。

4. まとめ

前立腺肥大症は、加齢男性ホルモンが深く関与している病気です。特にテストステロンが変換されて生成されるジヒドロテストステロン(DHT)が、前立腺の肥大化を促す主要な原因物質です。

症状に気づいたら、放置せず、泌尿器科の専門医に相談することが大切です。薬物療法だけでなく、生活習慣を見直すことで、症状の緩和と病気の進行抑制が期待できます。

ご自身のホルモンバランスや前立腺の状態について、何か不安な点があれば、お気軽に当院にご相談ください。

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