
ご家族やご本人が「高齢で癌が見つかった」と告げられたとき、これからの生活を思って胸が締め付けられるような不安を感じる方は少なくありません。
「体に負担がかかる手術に耐えられるだろうか」「最期まで自分らしく過ごせるのか」という悩みは、支える側にとっても大きな重荷になります。
今回は、北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科が、高齢者の膀胱癌の生存率について解説します。
体に優しい治療の選択肢や、在宅医療と緩和ケアについても解説しているので、参考にしてみてください。
高齢者の膀胱癌「生存率」について

まずは、膀胱癌の生存率とリスクについて解説します。
膀胱癌が発覚した場合、どのくらいの生存率になるのか気になっている方は、内容をチェックしてみてください。
統計上の5年生存率と「期待余命」の考え方
膀胱癌における5年生存率の数字は、これからの過ごし方を決めるための目安になります。
膀胱癌の5年生存率は、ステージによって以下のように異なります。
| ステージ | 実測生存率 |
| Ⅰ期 | 70.8% |
| Ⅱ期 | 47.1% |
| Ⅲ期 | 34.2% |
| Ⅳ期 | 16.7% |
※出典:「2015年5年生存率」院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
実測生存率からもわかるように、早期の段階であれば生存率が高まるため、早めの発見が重要です。
ただし、高齢者の場合は、残された寿命の見通しである「期待余命」をあわせて考える姿勢が求められています。
癌を完全に消し去ることにこだわりすぎず、本人が望む生活をどれだけ長く続けられるかに目を向けることが、納得感のある選択につながります。
年齢よりも「全身状態(PS)」が予後を左右する
治療の進め方を判断する材料として、実年齢以上に「全身状態(PS:パフォーマンスステータス)」という指標が重みを持ちます。
全身状態は、食事や着替えといった日常の動作をどの程度自分で行えるかを数値化したものです。
数値が良好であれば、年齢に関係なく体に負担の少ない範囲で積極的な治療に踏み切る土台が整っていると判断できます。
一方、一日の大半をベッドで過ごしているような状態であれば、無理な治療よりも体調を整えるケアを優先することが多いです。
「癌死」か「老衰(自然死)」のリスクについて
命の終わりが癌によるものか、あるいは老いによるものかという視点は、治療を考える上で避けて通れません。
身体を削るような強い治療は、時に本来の寿命を縮めてしまう恐れもあります。
癌と戦うことだけを目的とせず、寿命と病気のバランスを見極めながら、穏やかな最期を目指す考え方も、立派な選択肢の一つです。
関連記事:膀胱癌ステージで決まる治療法!膀胱を残せる基準と生存率を解説
体に負担をかけない「高齢者向けの治療」という選択肢

次は、体に負担をかけにくい「高齢者向けの治療方法」を解説します。
- 内視鏡手術(TURBT)
- 放射線療法のメリット・デメリット
- ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)
どのような選択肢があるか気になる方は、参考にしてみてください。
内視鏡手術(TURBT)
内視鏡手術は、尿道から細いカメラを入れて、腫瘍を削り取る手術です。
お腹を大きく切る必要がないため、体力に不安がある方でも受けやすい点が魅力です。
また、一度ですべてを治そうとするのではなく、再発の度に腫瘍を丁寧に取り除くことで、大きな手術を避けながら暮らし続ける共生の道を選べます。
「放射線療法」のメリット・デメリット
放射線療法は、手術が難しい場合でも自分の膀胱を残したまま癌の勢いを弱らせられる点が魅力です。
一方で、治療のために何度も通院する必要があり、人によっては足腰に疲れが出る場合や、放射線の影響でおしっこの回数が増える側面などもあります。
良い面と負担になる面のバランスを考え、毎日の生活が無理なく送れるかどうかを慎重に見極めることが大切です。
ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)
ベスト・サポーティブ・ケアは、癌そのものを攻撃する治療をあえて行わず、痛みや不快な症状を取り除くことに力を注ぐ考え方です。
治療を投げ出すのではなく、残された期間を家族と笑って過ごすために、体力を温存する前向きな選択肢になります。
強い薬物療法などで体への影響を遠ざけ、今の穏やかな日々を何よりも優先する支援が受けられます。
住み慣れた場所で過ごすための在宅医療と緩和ケア

次は、住み慣れた場所で過ごすための、在宅医療と緩和ケアについて解説します。
どのくらいまで自宅で過ごせるのか、緩和ケアにはどのような方法があるのか気になる方は、確認してみてください。
痛みをコントロールすれば、最期まで自宅で過ごせる
住み慣れた我が家で最期まで過ごしたいという願いは、痛みや息苦しさを適切に抑えることで実現することが可能です。
現代の緩和ケアでは、強い痛みに対しても、飲み薬や張り薬を使い分けることで、意識をはっきりと保ちながら穏やかな時間を過ごせます。
苦痛を遠ざける処置は、本人らしさを守るだけでなく、そばで支える家族の不安を和らげる役割も果たします。
病院と同じような手厚いケアを自宅で受けることは、今の医療体制において十分に選べる道です。
訪問診療と介護保険の活用で家族の負担を減らす
自宅での暮らしを続けるためには、医師や看護師が定期的に家を訪ねてくれる「訪問診療」や「訪問看護」の手を借りるのが一つの選択肢です。
さらに、介護保険のサービスを組み合わせると、お風呂の介助や家事の助けを得ることで、家族が疲れ切ってしまう事態を避けられます。
厚生労働省が案内する相談窓口などを利用し、専門家のサポートを整えるのがおすすめです。
地域全体で支える仕組みを利用することで、介護の悩みを軽減できます。
高齢者の膀胱癌における「緩和ケア」の具体例

次は、高齢者の膀胱癌における緩和ケアの具体例を紹介します。
- 血尿をコントロールし、自宅での生活を続ける
- 排尿時の痛みを抑えて穏やかな夜を過ごす
- 尿が出なくなるリスクを回避するカテーテル管理
どのような緩和ケアがあるのか気になっている方は、チェックしてみてください。
血尿をコントロールし、自宅での生活を続ける
おしっこに血がまじる様子を目の当たりにすると、本人だけでなく、周りの方も気が落ち着かないことも多いです。
血尿を抑えるために、専用の薬を使ったり、膀胱の中をきれいに洗ったりすることで、日常生活を円滑に過ごせるように工夫します。
症状にあわせて処置をあらかじめ決めておくと、急な体調の変化にも慌てずに向き合える準備を整えられます。
排尿時の痛みを抑えて穏やかな夜を過ごす
高齢者の膀胱癌の緩和ケアでは、排尿時の痛みに関するケアもあります。
トイレに行くたびに痛みがあると、夜もぐっすり眠れず体力が削られてしまうことも少なくありません。
痛み止めの薬を上手に取り入れることで、おしっこをするときの刺激を和らげるのが緩和ケアの役割です。
さらにお薬の種類や量を調整しながら、夜間のトイレの回数を減らして身体を休める時間を増やすことが、毎日を支える力となります。
尿が出なくなるリスクを回避するカテーテル管理
癌の影響でおしっこが出にくくなると、お腹が張って苦しい思いをするのは辛いものです。
細かい管を通すカテーテル管理を行うと、無理に力を入れなくてもスムーズに尿を出す仕組みを整えられます。
訪問看護師による丁寧な手入れを受けることで、管を入れたままの生活でもトラブルを避けて清潔に過ごせる道を選べます。
まとめ

高齢者の膀胱癌に向き合う際、数字としての生存率だけにこだわらず、毎日の暮らしをいかに穏やかに過ごせるかに重きを置くのがおすすめです。
お体に負担の少ない内視鏡手術や、不快な症状を取り除く緩和ケアを組み合わせることで、住み慣れた家での生活を続ける道は十分に開かれています。
また、ご家族だけですべてを背負おうとせず、訪問診療や介護サービスなどの専門的な助けを借りることで、家族全体がゆとりをもてる状態になります。
高齢者で膀胱癌が発覚した際には、治療方法と日常生活のどちらも考慮して、治療方針を決定してください。
関連記事:膀胱癌の抗がん剤治療の期間は?副作用や仕事・費用の不安解消
聞きにくいことは「メール無料相談」で承ります

北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「かかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
「膀胱癌か心配で悩んでいる」という方は、院長による無料メール相談も行っておりますので、まずはお気軽に疑問点や懸念内容をご相談ください。
病院まで来られない方々にも往診で対応可能です。患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など



