
パートナーとの間に子どもを望んでいるけれど、「精子が少ない」と診断されて不安に感じていませんか?
「精子が少ない」という状態は、医学的に乏精子症(ぼうせいししょう)と呼ばれ、男性不妊の主要な原因の一つです。しかし、精子数が少なくても、適切な検査と治療によって妊娠に至る可能性は十分にあります。
この記事では、「精子が少ない」状態の基準から、その主な原因、妊娠の可能性、そして具体的な改善方法までを、神楽岡泌尿器科の専門家が詳しく解説します。
「精子が少ない」とはどんな状態なのか?
「精子が少ない」という診断は、精液検査の結果に基づいて行われます。精子の状態は日々変動するため、正確な診断には通常、2回以上の検査が推奨されます。
WHOの基準値と正常値の見方
WHO(世界保健機関)の基準では、自然妊娠に最低限必要な精液1mlあたりの精子数は1,600万匹以上とされています。この数値を下回る場合に乏精子症と診断されます。
ただし、健常な男性の精液1mlあたりの精子数は数億匹に達することもあります。より自然妊娠を目指す場合は、精液1mlあたり4,000万~5,000万匹以上が望ましいとされています。
乏精子症は精子数によって重症度がさらに分類されます。
- 軽度:精液1mlあたり1,600万匹程度
- 中等度:精液1mlあたり500万~1,600万匹以下
- 重度:精液1mlあたり500万匹以下
乏精子症と他の精子異常(精子無力症・精子奇形症)
精液検査では、精子数以外にも以下のような項目が評価され、これらの異常も不妊の原因となります。
- 精子無力症
精子運動率(運動している精子の割合)が42%未満の状態です。精子の数が十分でも、運動能力が低いと卵子までたどり着けません。
- 精子奇形症
精子正常形態率(見た目に異常がない精子の割合)が4%未満の状態です。健常な男性でも精子の約80%は奇形ですが、正常な形態の精子が極端に少ない場合に診断されます。
精液中に精子が全く見られない場合は無精子症と診断され、精子の通り道に問題がある「閉塞性無精子症」と、精子を作る機能に問題がある「非閉塞性無精子症」に分けられます。
▶関連記事:「無精子症とは?分類・検査・治療法まとめ」
精子が少なくなる主な原因
精子数が減少する原因は多岐にわたりますが、大きく分けて3つのカテゴリーがあります。男性不妊症の原因の約80%は精子の生成に問題がある「造精機能障害」が占めます。
加齢やホルモンバランスの変化
精子を形成するには、精巣で男性ホルモン(テストステロン)が作られる必要があります。加齢によってホルモンバランスが変化したり、ストレスが原因でホルモン分泌が低下したりすると、精子数の減少につながることがあります。
精索静脈瘤や感染症などの病気
精子数の減少や質の低下は、病気が原因であるケースも少なくありません。
- 精索静脈瘤
精巣周辺の静脈が拡張してこぶ状になる病気で、男性不妊の原因として最も多く、患者さんの30~40%に見られます。精巣の温度上昇や低酸素状態を引き起こし、精子に悪影響を及ぼします。
- 精巣炎
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)などによる精巣の炎症が、造精機能に影響を与えることがあります。
- 停留精巣
精巣が正常な位置に降りてきていない状態。
喫煙・ストレス・メタボリックシンドローム・睡眠不足など生活習慣
日々の生活習慣も精子の質や数に大きく影響します。
- 喫煙:喫煙は精子のDNAにダメージを与えることが指摘されています。
- ストレス・睡眠不足:過度なストレスや睡眠不足はホルモンバランスを乱し、精子数の減少につながります。
- 肥満:肥満はホルモンバランスを崩し、精子形成を妨げることがあります。
- 精巣周辺の高温:長風呂、サウナ、膝上でのPC作業、締め付けの強い下着は精巣の温度を上昇させ、精子の質や数を低下させる可能性があります。
精子数が少なくても妊娠できる?
「精子が少ない」と診断されても、決して妊娠を諦める必要はありません。多くの場合は、適切な治療と生活習慣の改善によって、妊娠の可能性を高めることができます。
自然妊娠の可能性と条件
精子数が少なくても、精子無力症や精子奇形症を伴わない軽度の乏精子症であれば、自然妊娠に至る可能性は十分にあります。
しかし、精子数が極端に少ない場合や、他の精子異常を伴う場合は、自然妊娠の可能性は低いと判断されます。
人工授精・体外受精・顕微授精の選択肢
自然妊娠が難しい場合でも、様々な生殖補助医療(ART)によって妊娠を目指せます。
- 人工授精(AIH):精液を直接子宮に注入する方法で、軽度の乏精子症に選択されます。
- 体外受精(IVF):体外で卵子と精子を受精させる方法です。
- 顕微授精(ICSI):精子が極めて少ない場合や運動率が低い場合に、卵子に直接精子を注入する高度な治療法です。精子1つあれば実施可能であり、重度の乏精子症や無精子症でも妊娠が期待できます。
まとめ
「精子が少ない」という診断は、男性にとって大きな衝撃となるかもしれませんが、決して子どもを諦める必要はありません。
不妊の原因の約半分は男性側にあるとされており、まずは泌尿器科の専門医に相談することが重要です。医師と二人三脚で原因を特定し、適切な治療や生活習慣の改善に取り組むことで、妊娠への道は開けます。
不妊治療は夫婦で行うもの。パートナーと悩みを共有し、一緒に検査・治療に取り組むことが、前向きな解決への第一歩となります。
聞きにくいことは「メール無料相談」で承ります

北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「かかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
「不妊のことで悩んでいる」という方は、院長による無料メール相談も行っておりますので、まずはお気軽に疑問点や懸念内容をご相談ください。
病院まで来られない方々にも往診で対応可能です。患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。
▶子どもが大好きな渋谷院長先生はどんな人?

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など