前立腺肥大症の薬「α1遮断薬」の効果と副作用を医師が解説

頻尿や夜間頻尿、残尿感などにお悩みの男性の方も多いのではないでしょうか？これらの症状は、前立腺肥大症が一つの原因である可能性があります。

こうした前立腺肥大症の症状改善に効果的な薬として、「α1遮断薬」が広く用いられています。

本記事では、α1遮断薬の前立腺肥大症の症状に対する効果について泌尿器科専門医が詳しく解説します。

α1遮断薬がどのように前立腺肥大症の症状を改善するのか、代表的な薬の副作用についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

前立腺肥大症の薬「α1遮断薬」とは？

α1遮断薬は、膀胱出口の閉塞を改善することで尿の通りをよくする薬です。

前立腺は、膀胱の出口付近にある男性特有の臓器で、加齢とともに前立腺が肥大すると、膀胱出口を圧迫し、尿道が狭くなります。これが、排尿困難や残尿感などの症状を引き起こす原因へとつながるのです。

α1遮断薬は、前立腺や膀胱の筋肉（平滑筋）を緊張させている交感神経のα1受容体を妨げ、膀胱の出口を狭くする働きを弱めることで、前立腺肥大症による症状を改善します。

ただし、α1遮断薬は、前立腺肥大症の根本的な原因である、肥大した前立腺を小さくするものではなく、平滑筋の緊張を和らげ、尿道が広がり尿の通りをよくする薬と言えます。

前立腺肥大症で処方される代表的なα1遮断薬の種類

前立腺肥大症で処方される代表的なα1遮断薬は、以下の3種類があります。

• ユリーフ
• ハルナール
• フリバス

それぞれの効果や副作用についてみていきましょう。

ユリーフ

ユリーフは、シロドシンを有効成分とする医薬品です。

従来の前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬に比べ、血管系への副作用が少なく、前立腺に多く存在するα1Aアドレナリン受容体を選択的に遮断することが特徴です。

＜用法・容量＞

通常、成人にはシロドシンとして1回4mgを、1日2回朝夕食後に経口投与します。症状に応じて適宜摂取量の調整が可能です。

＜副作用・注意点＞

ユリーフの主な副作用として、射精障害（逆行性射精など）、口渇、下痢、立ちくらみ、めまい・ふらつき、頭痛が報告されています。

なかでも、他のα1遮断薬と比較して射精障害が副作用として起きる原因は、下部尿路組織平滑筋に存在するα1受容体を遮断することで尿路平滑筋がゆるみ、射精時に精液が膀胱に逆流することがあります。

また、精嚢や精管にもα1受容体が分布しているため、α1受容体が遮断されることで精管の収縮が抑制され、うまく射精できないことが考えられます。

ユリーフを服用して体調に変化がある場合は、使用を注意して医療機関へ受診してください。

ハルナール

ハルナールは、タムスロシンを有効成分とする医薬品です。

尿道や前立腺に存在するα1受容体を遮断することで、前立腺による尿道の圧迫をゆるめ排尿障害を改善します。

＜用法・容量＞

通常、成人にはタムスロシンとして 0.2mg を 1日 1 回食後に経口投与します。投与される量は、年齢、症状により必要に応じて調整されます。

＜副作用・注意点＞

ハルナールを服用すると副作用として、血圧低下やふらつきやめまいなどの症状が現れることがあります。

そのため、血圧を下げる薬を飲んでいる方は注意が必要です。ハルナールと血圧を下げるお薬を一緒に服用することで、血圧が更に下がってしまう可能性があります。

病院を受診する際は、お医者さんに必ず伝えるようにしましょう。

フリバス

フリバスは、ナフトピジルを有効成分とする医薬品です。

前立腺・尿道のα1 受容体を選択的に遮断し平滑筋収縮を抑制し、尿道の緊張を和らげることで排尿障害の症状を改善します。

＜用法・容量＞

通常、成人にはナフトピジルとして1日1回25mgより投与を始めます。効果が不十分な場合は、1～2週間の間隔をおき50～75mgに増量し、1日1回食後に経口投与してください。

なお、症状に応じて適宜調整しますが、1日の最高投与量は75mgまでとされています。

＜副作用・注意点＞

発疹や蕁麻疹などの過敏症の既往歴がある患者さんは注意が必要です。

フリバスを服用することで、同様に発疹や痒み、蕁麻疹が出ることがあるため、お薬手帳の副作用の欄に記載するなど、医師・薬剤師がわかるようにしておくと安心です。

α1遮断薬は市販でも買える？

上記でご紹介した、ユリーフ、ハルナール、フリバスなどのα1遮断薬は、市販で購入することはできません。医療用医薬品であるため医師の処方が必要です。

頻尿などの軽度な排尿障害であれば、八味地黄丸などの市販の漢方薬で症状を緩和できる可能性があります。

※個人差がありますので専門医とご相談の上、進めてください。

前立腺肥大症と漢方薬の関係については以下の記事で解説しているのでご参照ください。

まとめ

α1遮断薬は、前立腺肥大症の排尿症状を改善する効果的な薬です。しかし、α1遮断薬は根本的な治療薬ではないため、症状が改善されない場合は、他の薬の処方や治療法を検討する必要があります。

前立腺肥大症の症状でお悩みの方は、泌尿器科を受診し、医師に相談するようにしましょう。当院では、院長の渋谷先生へのメール相談も受け付けているのでお気軽にお問い合わせください。

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神楽岡泌尿器科

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」

札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など