前立腺肥大症の症状は漢方薬で改善できる?専門医が解説します

50代を過ぎると、頻尿や夜間頻尿、残尿感などのお悩みを抱える男性が増えてきます。これらの症状は、加齢とともに男性ホルモンのバランスが乱れ、前立腺が肥大化する前立腺肥大症が原因の一つであると考えられます。

前立腺肥大症の初期段階には、主に薬物療法が用いられますが、今回は、薬物療法のなかでも漢方薬の症状改善について解説します。

前立腺肥大症の症状と漢方薬の関係性について、正しく理解を深めましょう。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」

札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など

前立腺肥大症の症状は漢方薬で改善できる?

前立腺肥大症の治療薬として処方される漢方薬は、前立腺肥大症による以下のような症状の改善に効果が期待できます。

  • 頻尿
  • 夜間頻尿
  • 排尿困難
  • 残尿感

漢方薬は、自然由来の植物、動物、鉱物などを原料とする伝統的な中国医学に基づいた治療法で、西洋医学的な治療法と異なり、体質や症状に合わせて個別に処方される点が特徴です。

ただし、漢方薬はあくまでも、症状を改善するための補助的な治療法として位置づけられており、漢方薬だけで前立腺肥大症が100%完治することはありません。

症状が重い場合や、漢方薬で効果が見られない場合は、薬物療法や手術療法との併用を検討する必要があります。

前立腺肥大症と薬に関するお悩みは、以下の記事でも解説しています。

前立腺肥大症で処方される代表的な漢方薬の種類

ここでは、前立腺肥大症で処方される代表的な漢方薬をいくつかご紹介します。

八味地黄丸

「八味地黄丸(はちみじおうがん)」は、腎虚(じんきょ)と呼ばれる腎の機能が低下した前立腺肥大症に効果的な漢方薬です。

漢方でいう「腎」とは、現代医学でいう腎臓だけでなく、副腎、膀胱、そして生殖器を含めた機能の総称を指します。

八味地黄丸には、8種類の生薬が配合され、これらの腎の機能を補う作用があり、頻尿や軽い尿もれ、残尿感、夜間尿、排尿困難などの改善に効果が期待できます。

<副作用・注意点>

以下に該当する方は服用する前に医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。

  • 医師の治療を受けている人
  • 妊婦又は妊娠していると思われる人
  • 胃腸が弱く下痢しやすい人
  • のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人
  • 今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人

発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃の不快感、腹痛、動悸、のぼせ、口唇や舌のしびれなどの症状が生じた場合は副作用の可能性があります。

服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

<用法・用量>

用法・用量は商品によって異なります。1回に服用する量や1日の服用回数、服用可能な年齢などは、購入または処方された商品の「用法・用量」を読み、正しくお使いください。

牛車腎気丸

漢方製剤「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」は、八味地黄丸(はちみじおうがん)に、さらに生薬を加え10種類の生薬が配合された漢方薬です。

牛車腎気丸は、尿量減少、腰痛、下肢のむくみの強いものなどに用いられるほか、足腰などの痛みやしびれの改善に作用する漢方薬で、下半身の痛みや排尿トラブルなどがある方におすすめです。

<副作用・注意点>

以下に該当する方は服用する前に医師、薬剤師または登録販売者にご相談ください。

  • 医師の治療を受けている人
  • 妊婦又は妊娠していると思われる人
  • 胃腸が弱く下痢しやすい人
  • のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人
  • 今までに薬などにより発疹・発赤、かゆみ等を起こしたことがある人

発疹、発赤、かゆみ、食欲不振、胃の不快感、腹痛、動悸、のぼせ、口唇や舌のしびれなどの症状が生じた場合は副作用の可能性があります。

服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。

​​また、まれに下記の重篤な症状が起こることがあります。その場合は直ちに医師の診療を受けてください。

間質性肺炎階段を上ったり、少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空せき、発熱等がみられ、これらが急にあらわれたり、持続したりする。
肝機能障害発熱、かゆみ、発疹、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、褐色尿、全身のだるさ、食欲不振等があらわれる。

<用法・用量>

用法・用量は商品によって異なります。1回に服用する量や1日の服用回数、服用可能な年齢などは、購入または処方された商品の「用法・用量」を読み、正しくお使いください。

漢方の処方薬と市販薬の違い

処方薬と市販薬の漢方は、使用される生薬自体は同じですが、生薬成分の量や配合比が異なる場合があります。

ドラッグストアなどで販売されている市販薬は、自身の判断で選ぶことができるため、安全性を考慮して、1日の服用量中の成分量が少ない場合が多いです。

また、市販薬は、症状に合致したものを選ぶのが難しく、副作用や、他の薬との飲み合わせで問題が生じる可能性もあります。

一方で、処方薬は医師が患者さんの状態に合わせて服用量を調整するため、前立腺肥大症の症状緩和には、医師による診察のもと、個々の症状や体質に合った漢方薬を処方してもらいましょう。副作用や飲み合わせについても適切な指導を受けることができます。

まとめ

前立腺肥大症の症状は、漢方薬で改善できる可能性があります。しかし、漢方薬は万能薬ではなく、症状が重い場合や、漢方薬で効果が見られない場合は、他の薬物療法や手術療法との併用を検討する必要があります。

前立腺肥大症の症状でお悩みの方は、泌尿器科を受診し、医師に相談するようにしましょう。当院では、院長の渋谷先生へのメール相談も受け付けているのでお気軽にお問い合わせください。

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