急増する【梅毒】男性の症状や治療法をわかりやすく解説

梅毒といえば「昔に流行した病気」という認識の方も多いですが、ここ数年で爆発的に感染者数が増えています。梅毒は今も増え続けている現代の病の一つです。

しかし、梅毒=性感染症というイメージはあっても、具体的に症状や治療法まで知っている方は少ないでしょう。

そこで性病を扱う泌尿器科医の院長渋谷が、統計的なデータと一緒に梅毒の男性の症状や治療法をわかりやすく解説していきます。

心当たりがある方は治療のための一歩として参考にしてみてください。

 

梅毒の症状

梅毒は感染してから症状が現れるまでに時間がかかる、無症候期間があります。

その後、症状が出始める第1期~第4期までの症状が出てくるのですが、第1期~第2期や第2期~第3期まで移行期間ごとに無症状の期間があるため、非常に発見が遅くなりがちです。

時期ごとに症状をみていきましょう。

 

【第1期】梅毒感染後から3週間後〜3ヶ月の間に現れる症状

第1期の主な症状
  • 初期硬結(しょきこうけつ)…性器・肛門・唇など、梅毒に感染した箇所に硬いしこりのこと。痛みやかゆみはほとんどない。
  • リンパ節の腫れ…主に、太ももの付け根などのリンパ節が腫れることがある。無症状である場合が多い。
  • 硬性下疳(こうせいげかん)…硬いしこり(初期硬結)を中心に出る潰瘍のこと。

男性の場合は、亀頭や亀頭と陰茎の間や唇に硬いしこりや潰瘍が出ることが多いですが、痛みが無かったり見た目ではわかりにくい場合があるため見逃しがちです。

さらに、厄介なことに、放置していると自然に消えてしまうため、治ったと勘違いして放置する方が多くいらっしゃいます。

しかし、3週間後〜3ヶ月が過ぎると、血管を通して梅毒が身体に回っていくことになります。

 

【第2期】梅毒感染後から3ヶ月~3年間で現れる症状

第2期の主な症状
  • 丘疹性梅毒疹(きゅしんせいばいどく)…身体のいたるところに、小豆〜えんどう豆程度の赤茶色の結節(隆起)ができる。
  • 梅毒性乾癬(ばいどくせいかんせん)…手のひらや足の裏に、赤茶色の濡れた発疹ができ、乾燥すると白いフケのようなものが出始める。
  • 梅毒性バラ疹…身体のいたるところに、痛みもかゆみもないピンク色の円形のアザができる。
  • 扁平コンジローマ(へんぺいこんじろーま)…性器や肛門周辺にピンク色〜薄い灰色の平らなイボができ、分泌物がでる。
  • 膿疱性梅毒(のうほうせいばいどく)…身体のいたるところに膿が溜まった水ぶくれができること。
  • 梅毒性白斑(ばいどくせいはくはん)…皮膚の一部が白くなること。
  • 梅毒性アンギーナ…喉が、扁桃を中心にただれて赤く腫れること。
  • 梅毒性脱毛…虫食い状の脱毛のこと。

第2期は、3ヶ月~3年間と長い間梅毒によって様々な症状を引き起こします。この時期は「何かおかしい」と疑問に思い、病院に受診される方も多くいらっしゃる期間です。

しかし、症状が出始めたばかりで気づかないうちにパートナーに移ってしまう可能性もあります。特に、性器や肛門周辺に現れる平らなイボは分泌物を出すため、感染源になりがちです。

第2期は、第1期の症状と同じく症状が消えてしまうため、病院に行くタイミングが遅ければ「治ったから病院に行く必要ない」と誤った判断をされる方もいらっしゃいます。そして、適切な治療・診断が行われず、第3期へと突入してしまいます。

 

【第3期】梅毒感染後から概ね3〜10年以上経過している状態

第3期の主な症状
  • 結節性梅毒疹・ゴム腫…皮膚・骨・筋肉・臓器などに硬いしこりやゴムのような腫瘍ができること。

第3期になると、身体の様々な箇所に硬いしこりやゴムのような腫瘍ができ、周囲の細胞を破壊していきます。

梅毒は江戸時代から不治の病とされており「梅毒になると鼻が落ちる」と言われているのは、鼻骨はゴム種の影響を受けやすいため鼻が落ちてしまうためです。

ここから第4期に進むと、生命にかかわる重篤な症状が引き起こされます。

 

【末期】第4期感染後から概ね10年以上経過している状態

10年以上梅毒を患ったとしても、新しい症状が出るわけではありません。

しかし、放置していることで、身体にあらゆる重要な器官(脳・心臓・血管・神経・目など)が梅毒に置かされると大動脈瘤形成・大動脈破裂・進行麻痺・痴呆などを引き起こし、死に至ることもあります。

 

梅毒の原因・感染経路

梅毒の原因は、細菌の一種である梅毒トレポネーマです。主な感染ルートは性交渉で、梅毒感染者の粘膜・皮膚が接触することで感染してしまいます。

オーラルセックスやキスだけでは梅毒は移らないと考えている方もいらっしゃいますが、非常に危険な間違いです。例えば、梅毒の第1期症状である硬いしこりなどの無自覚の症状が出ている唇とキスするだけで病原菌が侵入します。

梅毒は、あらゆる性行為(セックス・アナルセックス・オーラルセックス・キス)でうつってしまうため、正しい知識が必要です。

 

梅毒の検査・診断方法について

梅毒の検査・診断は、血液検査と視診です。

血液検査の結果を見たうえで、梅毒第1期の症状である硬いしこりや原因不明の皮疹が視診で発見されると、感染する機会があったかどうかを問診し、疑わしい場合は梅毒抗体検査を行います。

しかし、梅毒は感染してから1か月以内では結果が上手く出ないため、梅毒に感染してから約1ヵ月以降に血液検査をし、さらに、3ヵ月経過後も血液検査を行い、陰性であれば感染していないと判断できます。

梅毒は感染してから症状が出るまで3週間、検査で陽性と判断できるまでは4週間程度かかるというわけです。

 

梅毒の治療法

梅毒治療は、内服薬が主です。

ペニシリン系の抗菌薬を、症状に応じて4~12週間程度の服用する必要があります。内服薬を飲んだ後に定期的な検査を受けて根治が認められて、初めて治療終了となります。決して、自己判断で内服薬の服用をやめないでください。

服用期間を2~12週間程度とご紹介しましたが、治療機関は梅毒に感染した時期によって異なります。

梅毒の治療期間
  • 第1期:2~4週間
  • 第2期:4~8週間
  • 第3期以上:8~12週間
渋谷先生
渋谷先生
感染してからすぐに受診すると治療期間は短く、予後は良好です。早期受診・早期治療がどれだけ影響を及ぼすのかがわかりますね。

 

梅毒の再発防止・予防方法

梅毒の再発防止・予防方法を行うには、梅毒感染者とのあらゆる性交渉を避けることが重要です。不特定多数との性交渉を避けることを当たり前にし、コンドーム着用をしましょう。

血液からも感染するリスクがあるため、コンドームの着用で100%の予防はできませんが、パートナーとお互い感染していないことを検査・確認することで感染リスクは下げられます。

1度梅毒に感染し根治したからといっても、完全な免疫が付くわけではありません。自身の体を過信せず、疑わしい場合は早期受診をする習慣を身に着けることが、1番の梅毒の再発防止・予防方法でしょう。

 

梅毒のよくあるご質問

性感染症は他人にしゃべりづらいため、相談できずに1人で悶々と考えがちです。そこで、梅毒について悩みを抱える方に、よくある質問を4つまとめました。ぜひ、参考にしてください。

 

治療をしなくても症状がなくなりました。梅毒は自然に治りますか?

A.梅毒が自然に治ることはありません。

梅毒は自然に治ることはなく、症状が消えたとしたら次はさらに重い症状が現れる可能性が高いです。梅毒は治療しなくても自然に症状が消える期間があるため勘違いしやすいですが、放置することで死に至る重篤な病気です。

症状が一時的になくなったとしても、自己判断はせずに受診しましょう。

 

梅毒はオーラルセックスでも感染しますか?

A.梅毒は、オーラルセックスでも感染します。

梅毒はあらゆる性行為で感染するため、キスやオーラルセックスでも感染します。

特に第1期の症状は痛みやかゆみがないため症状に気づかずに過ごしている場合も考えられますが、第4期よりも感染間際の方が梅毒の感染力は強くなるため、注意が必要です。

 

梅毒治療後は免疫がついて再感染しなくなりますか?

A.1度梅毒にかかっても再感染します。

1度梅毒にかかった場合、多少は梅毒の免疫を獲得するとは思いますが、100%の免疫を獲得するわけではありません。

 

梅毒になってしまいましたが、パートナーに言えません。どうしたらいいですか?

A.梅毒になったら、言いづらくてもパートナーには必ず伝えましょう。そして、病院で一緒に検査をする必要があります。

梅毒になった場合、パートナーにも感染している可能性が非常に高く、パートナーも検査をする必要があります。

しかし、性感染症にかかってしまったらパートナーには誰であっても伝えにくいでしょう。「浮気を疑われるのでは?」「二度と性行為に応じてもらえなくなるのでは?」と不安を抱えたまま、伝えない方もいらっしゃいます。

本来は2人揃って受診に来るとスムーズですが、口で言いにくい場合は診断書をパートナーに見てもらうのも一つの手です。

 

梅毒は今でも増え続けている!北海道でも増えています

引用:東京都健康安全研究センター

梅毒は、古くから恐れられている性感染症で、昔は不治の病と言われていました。現在は治療法が研究され、早期発見・早期治療を行えば必ずしも死に至る病気とは言えなくなりましたが、梅毒の感染者数が減っているわけではありません。

2015年から徐々に増え続けていた梅毒でしたが、2021年には感染者数が急激に増加。年齢の内訳は、20代の若者の感染報告が多く上がっており、20代の男性は10年で10倍、女性は20倍にも増えています。

北海道でも統計的に梅毒は増加しています。

梅毒報告数累計

2022年

2021年

2020年

北海道/ 全国

331 / 7842

169 / 7978

122 / 5867

参考:北海道感染情報センター

過去3年間のデータをみても年々増え続けているのはお分かりいただけるでしょう。

この数字は報告数なので氷山の一角にすぎません。実際はもっと感染者がいると考えてよろしいでしょう。

梅毒のことは決して「過去の病気」と思わず、正しい知識を付けて早期受診を心がけましょう。正しい知識があれば「もしかしたら梅毒かもしれない」と頭をよぎり、梅毒の恐ろしさを知っている方なら必ず早い段階で病院を受診するはずです。

少しでも疑問に思った際は、専門医に診てもらいましょう。

 

まとめ

梅毒は感染してから症状が出るまで3週間もあり、何もしなくても症状が消えることが多いため、早期発見が遅れがちな病です。さらに、梅毒といえば「昔はやった病気」という認識を持っている方もいらっしゃいますが、ここ数年、増え続けている注意すべき性行為感染症です。

性病は複数の感染を合併していることが多くあるので、症状に応じて、各種の性病検査を受けることが必要となります。コロナウイルスと同様、大事なパートナーに移さないこと、感染を蔓延させないように心がけたいものです。

少しでも、痛みやかゆみのない硬いしこりや潰瘍ができたり、リンパ節が腫れてしまったりした経験がある方は早めの受診を行いましょう。

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