
「最近、腰が痛いのに、やけにトイレが近い…」「頻尿で困っていると思ったら、腰までだるくなってきた」
腰痛と頻尿。一見すると関係ないように思えるこの2つの症状が同時に現れた場合、もしかしたら体のどこかに異常が起きているサインかもしれません。
単なる疲れと放置してしまうと、思わぬ病気の進行を見逃してしまう可能性もあります。
この記事では、腰痛と頻尿が同時に起こる原因から、注意すべき重篤な病気のサイン、そしてセルフチェックのポイントや適切な受診の目安までを詳しく解説します。
あなたの「気持ちいいおしっこ」を取り戻し、健やかな毎日を送るために、ぜひ参考にしてください。気になる症状があれば、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。
1、腰痛と頻尿が同時に起こる理由
腰痛と頻尿が同時に起こる場合、実は身体からの重要なサインかもしれません。一見無関係に見えるこれらの症状がなぜ同時に現れるのか、その背後にはどのような病気が隠されているのかを解説します。
①腎盂腎炎
膀胱炎は、主に膀胱に細菌が感染して炎症を起こす病気で、頻尿や排尿痛が主な症状です。
この膀胱炎が悪化すると、腎盂腎炎(じんうじんえん)に進行し、腰痛を引き起こすことがあります。

メカニズムとしては、膀胱で増殖した大腸菌などの細菌が、尿管を逆流し、腎臓の中にある「腎盂(じんう)」という部分に到達して炎症を起こします。
腎盂腎炎になると、悪寒を伴う38℃以上の発熱(特に夕方から夜間)、そして腰の痛み(ほとんどの場合、左右どちらか一方)が特徴的に現れます。
これは、腎臓が腰のあたりに位置しているため、炎症が直接的に腰痛として感じられるためです。
特に、糖尿病の方、免疫力が低下している方、腎結石をお持ちの方は、膀胱炎から腎盂腎炎への移行リスクが高いため注意が必要です。膀胱炎の症状に加えて、腰の痛みや発熱が見られた場合は、腎盂腎炎の可能性を疑い、速やかに医療機関を受診することが重要です。
②尿路結石
「尿路結石」は、腎臓から膀胱へ尿が流れる通り道(尿路)に石ができる病気です。特に、尿管に結石が詰まる「尿管結石症」は、「痛みの王様」とも呼ばれるほどの激しい腰痛を引き起こします。
この痛みは突然、片側の腰に現れるのが典型的で、動いても横になっても和らがないのが特徴です。
結石が尿管を刺激したり、尿の流れを妨げたりすることで、腎臓が腫れ上がり、その結果として腰に強い痛みが生じます。

また、結石が膀胱に近い尿管に位置する場合や、結石による刺激が膀胱に波及することで、頻尿や残尿感といった膀胱刺激症状が現れることも少なくありません。さらに、尿管の粘膜が傷つけられることで血尿を伴うこともあります。
尿路結石による痛みは一時的に治まることもありますが、再発する可能性が高く、放置すると腎機能に影響を及ぼすこともあります。腰の激痛に加え、頻尿や血尿といった症状がみられる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
③前立腺炎(男性)
男性特有の病気である前立腺炎は、前立腺に炎症が生じることで、さまざまな不快な症状を引き起こします。
前立腺は膀胱のすぐ下に位置し、精液の産生など重要な役割を担っています。この炎症は、主に細菌感染による急性の場合と、原因が特定できない慢性の場合(特に35歳から50歳の男性に多い)に分けられます。
前立腺炎の主な症状は、排尿困難、排尿時の痛み、頻尿、陰部や下腹部の痛みなどです。そして、この炎症が腰痛として現れることもあります。
これは、前立腺が骨盤の深い位置にあるため、炎症が周囲の神経や筋肉に影響を及ぼしたり、痛みが放散したりすることで腰にだるさや重い痛みを感じるためと考えられます。
④腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、腰の骨(脊椎)の中を通る「脊柱管」というトンネルが狭くなり、その中を通る神経が圧迫されることで、さまざまな症状を引き起こす病気です。
早い人では40代後半から発症し、加齢とともに増える傾向にあり、全国で推定580万人が罹患しているとされています。
この病気の代表的な症状は、腰や足の痛み、しびれです。しかし、脊柱管を通る神経の中には、膀胱の働きをコントロールする神経も含まれているため、圧迫されることで排尿障害、特に頻尿や残尿感といった症状が現れることがあります。坐骨神経痛などの腰の神経の問題が、骨盤周りの神経にも影響を及ぼすため、結果として排尿機能に影響が出ることがあるのです。
もし、腰や足の痛みやしびれに加えて、頻尿などの排尿に関する症状も併発している場合は、腰部脊柱管狭窄症が関係している可能性があります。
進行すると排尿障害が悪化したり、最悪の場合、寝たきりにつながることもあるため、できるだけ早く診断を受け、適切な治療を開始することが大切です。まずは整形外科を受診し、腰の神経に問題がないかを確認することをおすすめします。
頻尿と腰痛のセルフチェックリスト
ご自身の症状がどの程度なのか、以下の項目でチェックしてみましょう。
- 痛みの部位: 腰のどのあたりが痛みますか?(左右どちらか、中央、下の方など)
- 痛みの頻度: 常に痛みますか?それとも特定の動作で痛みますか?
- 尿の状態: 尿の回数は多いですか?夜間にもトイレに起きますか?
- 熱の有無: 発熱はありますか?
- 血尿の有無: 尿に血が混ざっていませんか?(赤っぽい尿、濁った尿)
- 排尿時痛の有無: おしっこをする時に痛みがありますか?
受診の目安と診療科の選び方
これらの症状がある場合、どの診療科を受診すればよいか迷う方も多いでしょう。
- 頻尿や排尿に関する症状が主で、発熱や血尿がある場合
泌尿器科を受診しましょう。腎盂腎炎、尿路結石、膀胱炎、前立腺疾患などの可能性が高いです。
- 腰痛が強く、足のしびれや麻痺がある場合
整形外科を受診しましょう。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、脊椎の疾患が疑われます。
- 上記に加えて、全身倦怠感や発熱など、広範囲の症状がある場合
まずは内科を受診し、全身的な診察を受けることも検討しましょう。内科で適切な診療科への紹介を受けられる場合もあります。
腰痛と頻尿を放置するとどうなる?進行リスクとは
これらの症状を放置すると、病気が進行し、以下のようなリスクがあります。
- 腎機能の低下
腎盂腎炎や尿路結石を放置すると、腎臓の機能が低下し、最終的には人工透析が必要になることもあります。
- 感染症の悪化
感染症を放置すると、全身に菌が広がり、敗血症など命に関わる状態に陥る可能性があります。
- 神経症状の悪化
脊椎疾患による神経圧迫を放置すると、排尿障害が進行し、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、回復が困難になることもあります。
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北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「排尿のかかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
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▶子どもが大好きな渋谷院長先生はどんな人?

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など