2022年日本で最新の前立腺肥大症の手術が適用されました。その名も前立腺肥大水蒸気治療「WAVE」。
体への負担が少なく、手術時間も約10分程度の最新治療法です。
今回はまだ世に知られていないWAVEについてわかりやすくお伝えするので、前立腺肥大でお悩みの方はぜひご覧ください。
前立腺肥大水蒸気治療「WAVE」とは
WAVEは前立腺肥大症に対する新しい手術法で、2022年9月にようやく保険適用となりました。また、高額医療費制度の対象にもなっています。
方法としては、尿道から内視鏡を入れ、103度の水蒸気で前立腺の組織を壊死させ体に吸収させる方法です。
治療時間は10分ほどと短く、出血が少ないことから体への負担が少ない治療法として注目を集めています。
日本では2021年に認可された新しい治療法ですが、アメリカでは6年前から行われており、全世界では50ヶ国以上で行われている安全性の高い手術方法になります。
前立腺肥大水蒸気治療「WAVE」の2つのメリット
メリット1:体への負担が少なく、高齢者も安心して受けられる
WAVEは出血がほとんどなく、手術時間も10分程度、強い麻酔をかけなくて良いと体への負担が少ないことが特徴。
高齢者になればなるほど、体への負担が大きい手術は合併症のリスクが上がります。その点、WAVEであればリスクを下げて前立腺の治療ができる点が大きなメリットです。
メリット2:性機能が温存できる可能性がある
性機能(射精機能など)の温存も図れる可能性があるのもメリットの一つです。
ただし、術前と同じ性機能が維持されるかは個人差があります。必ず性機能が残るわけではないことにご注意ください。
参考として、今まででは勃起障害は報告されておらず、射精障害についても約3%程度と言われています。
前立腺肥大水蒸気治療「WAVE」のデメリット
WAVEのデメリットは、大きくなり過ぎた前立腺には行えない点です。
30〜70mlの中程度の大きさになった前立腺まではWAVEで治療できますが、それ以上の大きさになるとHoLEPなど別の手術を行うことになります。
全ての人が行えるわけではない点に注意しましょう。あなたがWAVEを受けられるかどうかは専門医の判断になります。一度レントゲンを取りますのでご来院ください。
どんな人に適用する治療方法?
まず、前立腺肥大の進行が中程度の方が受けられる手術です。体への負担が少ないため、高齢者の方には特に適用したい手術であり、術後を考えても受けられるならWAVEの方がおすすめです。
また、海外では日帰りの手術も行われており、日本でも一部の病院では日帰り手術を行っているとのこと。WAVEがより広まれば、忙しい社会人の方でも受けられる手術になります。
治療までの流れと術後の変化
ここで治療までの流れと術後の変化を説明します。具体的なイメージをつけてもらえると幸いです。
治療までの流れ
事前に外来診療していただき、手術の日程が決まったら前日までは通常通り生活してもらって大丈夫です。
手術当日は以下の流れで行います。
- 着替えて手術室に入る
- 麻酔を打つ
- WAVE手術開始(10分程度)
- 尿道カテーテルを留置
- 経過観察
次は、術後の変化について見ていきましょう。
術後の変化
術後は尿道にカテーテルを一定期間挿入し、2週間〜3ヶ月程度かけて排尿状態を改善していきます。
主な合併症と対処法は以下の通り。
- 血尿:止血剤の内服
- 尿閉:カテーテルの再留置
- 尿路感染:抗菌剤の内服・点滴
これからは通常術後すぐに発生し、1ヶ月程度で回復することが多いです。
術後3〜7日は、カテーテルが入っていることで痛みを感じることもあります。その場合は鎮痛剤などを飲みながら経過を見ていきます。
また、尿道カテーテル抜去後は、尿失禁をしてしまうケースが多くあります。時間経過と共に改善することが多いですが、尿失禁があるうちは尿とりパッドなどを使用し対処します。
他の前立腺肥大症の手術との違い
一番の違いは、やはり体への負担が少ないこと。特にWAVEは出血がほぼ無いので抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる人にも受けてもらえる手術です。
日帰りでもできる手術という意味ではHoLEPと同様ですが、WAVEは前立腺を全ては取らないので性機能が残る可能性がある点が違いです。
他の前立腺肥大症の手術については以下の記事で解説していますので、手術を検討されている方はご覧ください。
前立腺肥大の手術について種類・適用レベル・術後の治療を詳しく解説
まとめ
今回は前立腺肥大水蒸気治療「WAVE」について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
- WAVEは2022年に保険適用になった新しい手術
- メリットは「体への負担が少なく、高齢者でも安心して受けられる」「性機能が温存できる可能性がある」こと
- デメリットは「大きくなり過ぎた前立腺には適用できない」こと
- 日帰りで手術ができる所もある
前立腺肥大症では、手術前にもできることがあります。詳しくは以下の記事で解説しているので、体へ負担をかける前に試してみてください。
この他にお困りのことや、WAVEについて詳しく知りたいなどあれば、院長直通メールをご利用ください。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など