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日常生活における排泄ケア

1.排尿障害のために生活が不活発になっている人に

最近の紙おむつは、吸水力や防臭効果などの性能が飛躍的にアップしています。多少の尿もれがあっても、パットや失禁パンツをつけて買い物や散歩、デイサービスなどに出かけましょう。気持ちが前向きになって楽しみが増えると、オシッコのことをあまり気に病まなくなり、適度な疲労によって夜間も熟睡できるようになります。

2.頻尿のため夜間ぐっすり眠れない人に

夜間頻尿が気になって眠れない人は、睡眠前の2時間は、できるだけ水分摂取を控えましょう。眠れないからといって安易に睡眠導入剤に頼ると口が渇きやすくなり、夜間移動時に足元がふらつき転倒しやすくなります。男性は、排尿のたびに処理しなくてもよい尿器や自動採尿器を積極的に活用し、女性は排尿量に応じた紙おむつを使用したり、ベッドサイド型ポータブルトイレで安全に移乗できる環境を整えましょう。

3.おむつからの尿もれが気になる人に

IMG_20160607_2紙おむつは何枚も重ねてあてないようにしましょう。重ねると陰部にフィットせず、かえって横漏れして紙おむつの無駄使いになります。また、蒸れやずれによる皮膚のトラブルや股関節の動きの制限、腹部の圧迫など様々な問題を引き起こします。尿量や交換時間によって適切な紙おむつを選び、【知っておきたいオシッコの話<切迫性尿失禁>】でご紹介した通り、ソケイ部に沿わせて上手にあてることでもれを確実に少なくできます。

4.排便の問題で困っている人に

IMG_20160607_3便秘が気になる人は、起床後朝食前に150cc程度の水分補給や、積極的に食物繊維を摂取すること、毎日の定期的な排便習慣を身につけることをおすすめします。それでも便が硬くて排便が困難な場合は、緩下剤や市販の浣腸液を使用してみるのもよいでしょう。寝たきりなどで腸の蠕動運動が低下し頑固な便秘がある人は、摘便や洗腸について医師や看護師に相談し指導を仰ぎましょう。軟便や水様便は、直腸壁や肛門の宿便を摘便することで解決することもあります。

5.尿もれが気になって水分摂取を控えている人に

水分は毎日約1500ccは摂取しましょう。脱水すると尿が濃くなり膀胱や尿道を刺激して、ますます頻尿になります。また、認知症や喉の渇きを訴えられない人の場合、脱水が食欲低下や意識障害、問題行動といった形で現れることが多いので注意が必要です。少量ずつしか飲めない人には、枕元にコップを置いて夜間であっても水分摂取するよう心がけましょう。

6.尿留置カテーテルを入れている人に

尿留置カテーテルには、尿道カテーテルと皮膚から直接挿入したカテーテルなどがありますが、お風呂は清潔保持のため、不安がらずにカテーテルプラグをつけて積極的に入りましょう。カテーテルを間違えて引き抜きかけたり抜けてしまった場合は、尿道損傷による血尿や尿閉などの危険性が高いので、直ちに医師や訪問看護師に連絡をとって処置を受けて下さい。

 

排尿管理のポイント(2)

これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。

排尿困難の改善

日常生活の活動性が不十分な時期は、尿失禁より、残尿が生じる排尿困難への対応を優先します。その理由として、以下のことがあげられます。

①残尿があると新たに尿をためるスペースが狭まり、膀胱はすぐ満杯となるため、何回も収縮して排尿します。このような酷使状態の膀胱は、萎縮傾向となる危険性があります。

②残尿は膀胱炎の原因となります。炎症が繰り返されると、膀胱の線維化が生じ、萎縮傾向となる危険性があります。

①、②が進行して萎縮傾向となった膀胱を低コンプライアンス膀胱と呼び、簡単な治療では治りません。

失禁ケアのポイント

ケアをしようとする時には、十分にコミュニケーションをとることから始めましょう。高齢者は、困っていても遠慮や自尊心から、相談や訴えをしない場合も多いものです。

①ケアをする側の態度や表情が大切です。明るく、穏やかな声かけで相談しやすい雰囲気をつくりましょう。

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②ケアされる人の緊張の度合いなどを、表情などから判断しながら始めましょう。

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③声をかける時には、声の大きさ、速さ、言葉づかいに注意しましょう(ただし、十分に関係がとれたら、その場の雰囲気に合わせ、あまり形にこだわらないように・・・)。また、誘導の際の声かけでは、まわりの人に気付かれないように配慮しましょう。

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④認知症の方には、言葉で表現できなくても、行動パターンの中に排泄を示すサインがあります。焦らずに、じっくり行動を観察してサインを見つけるようにしましょう(サインとしては、部屋のすみや薄暗い場所に行ってモジモジするといった行動などがあります)。

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・排尿管理のポイント(1)

排尿管理のポイント(1)

これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。

ADL(日常生活活動)の改善

移動の方法や生活の仕方に応じた生活環境や排泄用具を整え、できるだけ排泄の自立を目指します。

①ベッド上でおむつをあてて排尿している人でも、尿意があれば電動ギャッジヘッドで背中を起こし採尿器での練習をさせます。

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②ベッドの端にひとりで座ることができる人には、高さが調節できる安定性のよいポータブルトイレを使い指導を行うと、自力で移動でき、足が床につくので排尿が楽になります。足が床につくことをレッグサポートと呼び、骨盤底筋群の弛緩により排尿反射が起こりやすくなります。

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③なんとかトイレまで移動できる人に対しては、廊下やトイレの壁への手すりの設置、立ちしゃがみが楽な洋式トイレへの改造をおすすめします。

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便秘の改善

便秘になると、腸内の便が膀胱を圧迫し、頻尿、さらに骨盤底筋群の弛緩を促し、腹圧性尿失禁につながります。また、排尿反射が起こりにくく、排尿困難をきたします。よって、下部尿路機能障害(LUTD)を訴える患者さんに接する時には、便秘の存在を念頭に入れておくことも必要です。

便秘の原因は、薬剤の影響などさまざまです。非活動的な生活も、腸の働きをにぶくさせるため便秘の原因となります。

IMG_20160524_4①ベッド上での足の屈伸運動やからだのねじり運動などによって腸の動きを促すことから始め、全身の活動性を高めていくような運動を徐々に増やしていくとよいでしょう。

②食物繊維の多い食品をとるとともに、肥満を防ぐことが大切です。例えば、有酸素運動である「骨盤底筋群体操」を生活習慣の中に取り入れて、毎日行うとよいでしょう。

③慢性的な便秘の場合には、安易に下剤を使わず、宿便や直腸周囲の硬便をまず摘便しましょう。肛門刺激になるとともに、怒責(腹圧をかけること)しやすくなり、便の通りも良くなります(浣腸は摘便をした後の方が効果的です)。

④朝、起床時に水分(水やお茶など)を100~150ml飲むことによって、便秘の予防になります。

⑤便秘に対する薬剤としては、便を柔らかくする酸化マグネシウム、大腸の運動を活発にするセンノシド、ピコスルファートナトリウムなどがあります。

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・排尿管理のポイント(2)

排泄用具を有効に活用するポイント

どんな用具でも、試行錯誤しながら使い方のコツをマスターしていくことが大切です。

ここでは、生活の質を高めるために知っておきたい介護の知恵を紹介します。

衣服着脱は、あせらず動作をマスターして

排泄ケアの自立支援において、思ったより難しいのが衣服の着脱です。コツをつかんでゆとりのある時間帯から始めましょう。

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便利な用具で介護負担の軽減を

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排泄関連用具の給付・貸与制度について

高齢者や障害をもった方の排泄の自立を支援し、介護者の負担を軽減することで毎日の生活が少しでもゆとりあるものになるよう、公的な給付制度を積極的に活用したいものです。

主な制度として介護保険制度に基づく福祉用具の貸与や購入費の支給、障害者自立支援法に基づく日常生活用具給付制度などがあります。各制度によってその内容や手続きの仕方が異なりますので、居住地の市区町村の相談窓口や地域包括支援センターなどにお問合せ下さい。

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※この表の用具は、「ADLレベルに応じた排泄関連用具の選び方」でご紹介した用具を中心にまとめたもので、制度上利用できる用具全てを表示しているわけではありません。制度内容は2008年4月に制定された内容ですので、その後に変更されることがあります。

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