タグ別アーカイブ: 排尿障害

残尿感・排尿トラブルに試してほしい3つのこと

当院の渋谷院長の著書『気持ちいいオシッコのすすめ』にも書いていますが、残尿感や尿の色が濃い・回数が少ない等の排尿トラブルの初期症状は、生活習慣を見直すことで簡単に改善できることがあります。

症状は気になるけれど、なかなか病院に行く時間がない!という方は、ぜひお試しください。

1.十分な水分補給(1日2000mlが目処です)

残尿感のある方は、尿意を気にして水分補給が不十分な場合があります。
尿の色が濃い・回数が少ない等の症状をお持ちの方にも同じことが言えます。

この1日2000mlというところで注意が必要なのは、朝起きてから夕飯までのおおよそ10~12時間の間に、ちょこちょこ小分けに飲むということです。2000mlを10で割れば、1時間に200ml。大きなペットボトルを短時間に一気飲みするのではなく、コップ一杯の水を1時間に1杯飲むくらいの軽い気持ちで心がけてみてください。

尚、まれに「沢山飲めばもっと早く良くなるのではないか?」と、1日3000ml以上も水分を摂ってすぐに続けられなくなったり、「2000mlに足りないのでは?」と夜寝る前にも水分を摂られる方がいらっしゃいますが、なにごとにも適量がありますので、あまりキッチリ考えて続けられなくならないよう、おおよそ1日2000mlを目処に多少のオーバーや少なさは気にせずに、そのうちに意識しなくてもいいくらいみなさんの習慣になればと思います。また、夜寝る前の水分補給は、夜間頻尿の原因にもなりますので、夕飯以降、少なくとも寝る3時間前の水分摂取はできるだけ避けてください。

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2.尿意を感じてもちょっと我慢してからトイレに向かう

「オシッコを我慢するなんて体に悪いんじゃないの?!」と驚かれる方も多いかと思いますが、残尿感のある方は、1回の排尿量が少ない場合があります。正常に機能している人は300mlくらい尿が溜まると尿意を感じますが、オシッコのトラブルを抱えている人は、100~200ml程度でトイレに向かい、残尿感を感じたり、頻尿では?と悩まれたりしています。本来、膀胱は500ml程度は溜めておけるようになっていますので、多少の個人差はあっても、300mlくらいまで溜めてから排尿しないと“気持ちいいオシッコ”はできません。

自分の1回の尿がどのくらいかわからないという方は、百円ショップ等で手軽に買える軽量カップ(500mlくらい計れるもの)を購入して、調べてみてください。100~200ml程度の方は1で述べたとおり、十分な水分補給と最初の尿意ですぐにトイレに行かないよう、意識してみてください。

3.排尿する際、いきまない

日頃から、“気持ちいいオシッコ”をされてる人には、なんのことを言っているかわからないと思いますが(本来、それでいいのです)、オシッコのトラブルを抱えている人の多くが、排尿の際に「いきんでいます」。

これは、自覚のある方とない方がいらっしゃるので、自覚のある方には説明しやすいのですが、自覚のない方の場合、ご自身の状況をご理解いただき、“いきまない排尿”をイメージできるようになるまで、少々時間がかかります。ただ、実際に受診していただき、こちらで検査していただくと、どれほど本人にいきんでいる自覚がなくても、検査結果にはしっかり表れます。

“いきまない排尿”とは、リラックスして、もらさないようにしていた心のカギを外し、全身の筋肉をゆるめ、大きな解放感ともに奔流することです。そして排尿中も排尿後もとても気持ちのいいもので、排尿は一種の快感とも言えます。

もし、排尿中にそんな爽快感や余裕はないという方は、“無意識にいきんでる”タイプの人かもしれません。排尿中にいきむことは排尿障害を引き起こす原因になりますので、トイレでは心も体もリラックスすることを心がけましょう。

それでも改善しない場合は泌尿器科を受診してください

上記の3つを心がけても症状が改善されない場合は、泌尿器科を受診してください。また、試してみようと思ったが、自分ひとりではうまくできない。といった場合も、当院にご相談いただければ、例え上手な院長が患者様ひとりひとりに合わせた表現方法で改善方法をアドバイスいたします。

尚、痛みや腫れを伴うような症状のある方は、上記を試す前にできるだけ早くお近くの泌尿器科を受診してください。

日常生活における排泄ケア

1.排尿障害のために生活が不活発になっている人に

最近の紙おむつは、吸水力や防臭効果などの性能が飛躍的にアップしています。多少の尿もれがあっても、パットや失禁パンツをつけて買い物や散歩、デイサービスなどに出かけましょう。気持ちが前向きになって楽しみが増えると、オシッコのことをあまり気に病まなくなり、適度な疲労によって夜間も熟睡できるようになります。

2.頻尿のため夜間ぐっすり眠れない人に

夜間頻尿が気になって眠れない人は、睡眠前の2時間は、できるだけ水分摂取を控えましょう。眠れないからといって安易に睡眠導入剤に頼ると口が渇きやすくなり、夜間移動時に足元がふらつき転倒しやすくなります。男性は、排尿のたびに処理しなくてもよい尿器や自動採尿器を積極的に活用し、女性は排尿量に応じた紙おむつを使用したり、ベッドサイド型ポータブルトイレで安全に移乗できる環境を整えましょう。

3.おむつからの尿もれが気になる人に

IMG_20160607_2紙おむつは何枚も重ねてあてないようにしましょう。重ねると陰部にフィットせず、かえって横漏れして紙おむつの無駄使いになります。また、蒸れやずれによる皮膚のトラブルや股関節の動きの制限、腹部の圧迫など様々な問題を引き起こします。尿量や交換時間によって適切な紙おむつを選び、【知っておきたいオシッコの話<切迫性尿失禁>】でご紹介した通り、ソケイ部に沿わせて上手にあてることでもれを確実に少なくできます。

4.排便の問題で困っている人に

IMG_20160607_3便秘が気になる人は、起床後朝食前に150cc程度の水分補給や、積極的に食物繊維を摂取すること、毎日の定期的な排便習慣を身につけることをおすすめします。それでも便が硬くて排便が困難な場合は、緩下剤や市販の浣腸液を使用してみるのもよいでしょう。寝たきりなどで腸の蠕動運動が低下し頑固な便秘がある人は、摘便や洗腸について医師や看護師に相談し指導を仰ぎましょう。軟便や水様便は、直腸壁や肛門の宿便を摘便することで解決することもあります。

5.尿もれが気になって水分摂取を控えている人に

水分は毎日約1500ccは摂取しましょう。脱水すると尿が濃くなり膀胱や尿道を刺激して、ますます頻尿になります。また、認知症や喉の渇きを訴えられない人の場合、脱水が食欲低下や意識障害、問題行動といった形で現れることが多いので注意が必要です。少量ずつしか飲めない人には、枕元にコップを置いて夜間であっても水分摂取するよう心がけましょう。

6.尿留置カテーテルを入れている人に

尿留置カテーテルには、尿道カテーテルと皮膚から直接挿入したカテーテルなどがありますが、お風呂は清潔保持のため、不安がらずにカテーテルプラグをつけて積極的に入りましょう。カテーテルを間違えて引き抜きかけたり抜けてしまった場合は、尿道損傷による血尿や尿閉などの危険性が高いので、直ちに医師や訪問看護師に連絡をとって処置を受けて下さい。

 

排尿管理のポイント(2)

これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。

排尿困難の改善

日常生活の活動性が不十分な時期は、尿失禁より、残尿が生じる排尿困難への対応を優先します。その理由として、以下のことがあげられます。

①残尿があると新たに尿をためるスペースが狭まり、膀胱はすぐ満杯となるため、何回も収縮して排尿します。このような酷使状態の膀胱は、萎縮傾向となる危険性があります。

②残尿は膀胱炎の原因となります。炎症が繰り返されると、膀胱の線維化が生じ、萎縮傾向となる危険性があります。

①、②が進行して萎縮傾向となった膀胱を低コンプライアンス膀胱と呼び、簡単な治療では治りません。

失禁ケアのポイント

ケアをしようとする時には、十分にコミュニケーションをとることから始めましょう。高齢者は、困っていても遠慮や自尊心から、相談や訴えをしない場合も多いものです。

①ケアをする側の態度や表情が大切です。明るく、穏やかな声かけで相談しやすい雰囲気をつくりましょう。

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②ケアされる人の緊張の度合いなどを、表情などから判断しながら始めましょう。

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③声をかける時には、声の大きさ、速さ、言葉づかいに注意しましょう(ただし、十分に関係がとれたら、その場の雰囲気に合わせ、あまり形にこだわらないように・・・)。また、誘導の際の声かけでは、まわりの人に気付かれないように配慮しましょう。

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④認知症の方には、言葉で表現できなくても、行動パターンの中に排泄を示すサインがあります。焦らずに、じっくり行動を観察してサインを見つけるようにしましょう(サインとしては、部屋のすみや薄暗い場所に行ってモジモジするといった行動などがあります)。

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・排尿管理のポイント(1)

排尿管理のポイント(1)

これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。

ADL(日常生活活動)の改善

移動の方法や生活の仕方に応じた生活環境や排泄用具を整え、できるだけ排泄の自立を目指します。

①ベッド上でおむつをあてて排尿している人でも、尿意があれば電動ギャッジヘッドで背中を起こし採尿器での練習をさせます。

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②ベッドの端にひとりで座ることができる人には、高さが調節できる安定性のよいポータブルトイレを使い指導を行うと、自力で移動でき、足が床につくので排尿が楽になります。足が床につくことをレッグサポートと呼び、骨盤底筋群の弛緩により排尿反射が起こりやすくなります。

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③なんとかトイレまで移動できる人に対しては、廊下やトイレの壁への手すりの設置、立ちしゃがみが楽な洋式トイレへの改造をおすすめします。

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便秘の改善

便秘になると、腸内の便が膀胱を圧迫し、頻尿、さらに骨盤底筋群の弛緩を促し、腹圧性尿失禁につながります。また、排尿反射が起こりにくく、排尿困難をきたします。よって、下部尿路機能障害(LUTD)を訴える患者さんに接する時には、便秘の存在を念頭に入れておくことも必要です。

便秘の原因は、薬剤の影響などさまざまです。非活動的な生活も、腸の働きをにぶくさせるため便秘の原因となります。

IMG_20160524_4①ベッド上での足の屈伸運動やからだのねじり運動などによって腸の動きを促すことから始め、全身の活動性を高めていくような運動を徐々に増やしていくとよいでしょう。

②食物繊維の多い食品をとるとともに、肥満を防ぐことが大切です。例えば、有酸素運動である「骨盤底筋群体操」を生活習慣の中に取り入れて、毎日行うとよいでしょう。

③慢性的な便秘の場合には、安易に下剤を使わず、宿便や直腸周囲の硬便をまず摘便しましょう。肛門刺激になるとともに、怒責(腹圧をかけること)しやすくなり、便の通りも良くなります(浣腸は摘便をした後の方が効果的です)。

④朝、起床時に水分(水やお茶など)を100~150ml飲むことによって、便秘の予防になります。

⑤便秘に対する薬剤としては、便を柔らかくする酸化マグネシウム、大腸の運動を活発にするセンノシド、ピコスルファートナトリウムなどがあります。

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・排尿管理のポイント(2)

排泄用具を有効に活用するポイント

どんな用具でも、試行錯誤しながら使い方のコツをマスターしていくことが大切です。

ここでは、生活の質を高めるために知っておきたい介護の知恵を紹介します。

衣服着脱は、あせらず動作をマスターして

排泄ケアの自立支援において、思ったより難しいのが衣服の着脱です。コツをつかんでゆとりのある時間帯から始めましょう。

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便利な用具で介護負担の軽減を

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排泄関連用具の給付・貸与制度について

高齢者や障害をもった方の排泄の自立を支援し、介護者の負担を軽減することで毎日の生活が少しでもゆとりあるものになるよう、公的な給付制度を積極的に活用したいものです。

主な制度として介護保険制度に基づく福祉用具の貸与や購入費の支給、障害者自立支援法に基づく日常生活用具給付制度などがあります。各制度によってその内容や手続きの仕方が異なりますので、居住地の市区町村の相談窓口や地域包括支援センターなどにお問合せ下さい。

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※この表の用具は、「ADLレベルに応じた排泄関連用具の選び方」でご紹介した用具を中心にまとめたもので、制度上利用できる用具全てを表示しているわけではありません。制度内容は2008年4月に制定された内容ですので、その後に変更されることがあります。

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ADLレベルに応じた排泄関連用具の選び方(3)

知っておきたいオシッコの話<腹圧性尿失禁>

治療法を知りたいあなたに

医療的対応には、病気によって運動療法、薬物療法、手術療法があります。その症状に応じて対応は異なってきます。排尿障害の種類および程度によって、全ての治療法が最善のものとなりうることを知っておいて下さい。対応が遅れると、膀胱機能の異常が進行し、その治癒に時間がかかるようになるので、早めに医師に相談しましょう。

尿失禁の種類:腹圧性尿失禁(診断名:真性腹圧性尿失禁)の治療法

①基本は前回ご紹介した骨盤底筋群体操です。

②この体操を継続して行い、3ヵ月後に効果が認められない場合。
a)もう一度骨盤底筋群の確認をして下さい。
b)専門医にご相談下さい。
c)過活動膀胱による切迫性尿失禁を合併している場合(混合性尿失禁)は尿失禁治療薬の内服が有効です。
d)内因性括約筋不全によるタイプの場合は専門医にご相談下さい。

用具類による対応策

●体操の効果が現れるまで、外出や運動の時には、軽失禁用ショーツや失禁量に応じたパッド、防水パンツ・メッシュパンツを着用すると安心です。

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知っておきたいオシッコの話<切迫性尿失禁>

治療法を知りたいあなたに

医療的対応には、病気によって運動療法、薬物療法、手術療法があります。その症状に応じて対応は異なってきます。排尿障害の種類および程度によって、全ての治療法が最善のものとなりうることを知っておいて下さい。対応が遅れると、膀胱機能の異常が進行し、その治癒に時間がかかるようになるので、早めに医師に相談しましょう。

尿失禁の種類:切迫性尿失禁(診断名:過活動膀胱ほか)の治療法

①尿失禁治療薬(抗コリン剤)の内服が有効です。副作用として、口渇、便秘がありますが、重篤なものではありません。

②前立腺肥大症などを合併する時は、その治療を優先します。尿失禁治療薬だけでは排尿困難をひどくさせる危険性があります。

※脳や脊髄などの障害がなくて(手足のマヒなどがなくて)も切迫性尿失禁を認めることがあります。この過活動膀胱は、加齢、腹圧性尿失禁、前立腺肥大症を合併します。また、神経因性過活動膀胱の約20%に、膀胱と尿道のバランスがくずれて排尿困難を認める排尿筋・括約筋協調不全を合併することに注意して下さい。なお、排尿しやすい姿勢としては、あえて座位での排尿をお勧めすることがあります。いきみをかけない排尿が理想的です。

用具類による対応策

●最近は少量の漏れに対応する失禁パッドや男性のちょい漏れ(終末時滴下)に対するものも出てきています。

●トイレに間に合わず比較的多量に勢いよくもれてしまう場合は、排尿量を許容できる吸水量の紙おむつを選択して下さい。

●横もれする場合は、紙おむつの立体ギャザーを活かしてソケイ部に沿わせ、尿溜りをつくるあて方を工夫しましょう。

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①立体ギャザーをまっすぐに立てる。
②パッドを重ね使用する場合は、立体ギャザー内に収まるサイズにする。

●おむつカバーはソケイ部にぴったり沿うもので、からだにマヒがあっても自分で着脱しやすいものを選びましょう。

知っておきたいオシッコの話<高齢者の自立支援>

以前、高齢者のADL(日常生活活動)の低下についてご紹介しましたが、私たちが、高齢者の自立に向けて支援しようとする時、排尿障害だけをみるのではなく、生活全体を見直しながら総合的な視点でかかわっていくことが大切です。生活を見直す際のポイントについてまとめました。

その人の望む生活に近づけましょう

「おもらし」があっても、外に出かけたいと望むか、寝たきりでも仕方ないとあきらめるかによって、選ぶ排泄用具や環境の整備法も変わってきます。

おむつをあてて寝たきりの生活をしたいと望む人はいないはずです。

最後まで人としての尊厳を保てるよう、あたたかい支援を心がけましょう。

どこに問題があるのかを見極めましょう

排泄行為は、トイレまでの移動や衣服の着脱、後始末などの一連の動作で成り立っており、「おもらし」の原因はさまざまです。

例えば、足腰の力が弱ってトイレまで行けない、衣服の着脱に手間取る、おしりが拭けないなどの日常動作の問題が原因となることもあります。

また、認知症のためのトイレの場所がわからない、介護者ひとりでは抱えてトイレに連れて行けない、和式便器ではしゃがめないなど、介護力の問題や生活環境の不備も考えられます。

どこに問題があるのか、その原因は何かを見極めましょう。

介護者の心身の負担を軽減しましょう

排泄の介護は、生理的な現象に基づくものです。その都度人手が必要であり、後始末や臭気の問題なども加わって介護者の心理的、身体的なストレスが高まる要因となります。

介護者の負担を少しでも軽くするためには、排泄用具や生活環境を整えることが大切です。それは高齢者の気兼ねや遠慮をなくし、自立意欲を高めることにもつながります。

失敗を恐れず試してみましょう

自立に向けて新たな排泄方法を試してみる場合、失敗はつきものです。「そそうしたら恥ずかしい」とか「迷惑をかけてしまう」といった高齢者の気持ちを考慮して、汚れてもいいように環境を整え、明るく根気よく取り組むことが大切です。

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ADLレベルに応じた排泄関連用具の選び方(1)
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排泄用具を有効に活用するポイント

知っておきたいオシッコの話<ADLの低下>

前向きな生活への発想転換

老化に伴って起こりやすい排尿障害があります。
例えば、間に合わなくておもらしをする、夜中に何回もオシッコに起きる、
トイレに立ってもなかなか出にくくて困ってしまう、などの経験をお持ちの方も多いと思います。

もう年だから、恥ずかしいからとあきらめてはいませんか?
でも、ちょっと待って下さい。
自分のからだの状態や日常生活の過ごし方を見直して、正しい対応策をとれば、元気にいきいきと暮らしていくことができます。

ここでは、高齢者によくみられるオシッコの問題に対して、考え方のちがいによって生活状況が大きく左右されることについてみていきましょう。

上手に解決できなかった人の話③

Oさんは73歳の男性です。脳血栓で左半身マヒになり、入院してリハビリを行った後、杖をついて退院しました。自宅でお嫁さんのお世話を受けながら、歩く練習をしていましたが、何度かトイレに間に合わず失敗してから、すっかり自信をなくし、部屋に閉じこもってしまいました。

次第にポータブルトイレも嫌がるようになり、おむつを使うようになってからはベッドに寝たままのことが多くなりました。食事も食べさせなければならず、介護の負担は増えるばかりです。その上、少し認知症も始まってきたようです。

何とか元気になってもらおうとがんばってきたお嫁さんも、どうしたらよいのかわからず、今ではすっかりあきらめてしまいました。

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上手に解決できた人の話③

Fさんは74歳の女性です。脳梗塞で入院しリハビリを受けましたが、右半身のマヒと軽い言語障害が残り、車椅子で退院しました。

お世話をするお嫁さんは、介護の注意点についていろいろな人に相談し、アドバイスを受けました。ベッドに手すりを取り付けたり、安定した椅子型のポータブルトイレを使ってみること、日中はできるだけ横にならないようにして、デイサービスセンターを利用することなどです。

また、動作に時間がかかりトイレに間に合わないことがあっても、着替えやパッドを準備して積極的に外出するなど、焦らず、あきらめずにやっていくことが大切だと知りました。退院するときはどうなることかと心配していましたが、今日も家族みんなで楽しく食卓を囲んでいます。

自立に向けて支援しましょう

私たちが高齢者の排泄のお世話をする時に、常に忘れてはならないことがあります。それは、高齢者の場合、排尿障害の症状や程度と日常生活における問題の大きさとが必ずしも一致しないということです。

例えば、図のような「オシッコが近い」という症状だけでなく、移動や下着の着脱といったADL(日常生活活動)の状況を正確に評価し、その状況に応じてできるだけ高齢者の自立を高め、生活を活性化していくことが大切です。

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知っておきたいオシッコの話<おもらしの種類>

前向きな生活への発想転換

老化に伴って起こりやすい排尿障害があります。
例えば、間に合わなくておもらしをする、夜中に何回もオシッコに起きる、
トイレに立ってもなかなか出にくくて困ってしまう、などの経験をお持ちの方も多いと思います。

もう年だから、恥ずかしいからとあきらめてはいませんか?
でも、ちょっと待って下さい。
自分のからだの状態や日常生活の過ごし方を見直して、正しい対応策をとれば、元気にいきいきと暮らしていくことができます。

ここでは、高齢者によくみられるオシッコの問題に対して、考え方のちがいによって生活状況が大きく左右されることについてみていきましょう。

上手に解決できなかった人の話②

Tさんは62歳の男性です。糖尿病を長く患っています。最近、排尿に時間がかかるようになってきたのですが、年のせいで仕方ないだろうと思い、気にしていませんでした。

ところが、出にくいばかりでなく、だんだん回数も多くなってきたことに気づきました。トイレから出てきてもまたすぐに行きたくなるので、わずらわしくて仕方ありません。そのうちもらしてしまいそうな気がして、仕事にも集中できず、落ち込みがちで、家族も心配しています。

おもらしの種類

160209_3「おもらし」といっても、いろいろな種類があります。ちょうど「目」の場合の、近視や遠視、乱視や、老化とともに起こる老眼と同じようなものです。その上に、男性・女性特有のからだの構造に関連したおもらしもあります。

ここでは、そんなおもらしの種類と、その特徴や症状などについてわかりやすくまとめてみました。

切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)

● 特徴・症状 ●
急に我慢できないような強い尿意があり、トイレに間に合わない状態。頻尿を伴うことが多い。

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
興奮(収縮する)普通160209_4

● 原因 ●
脳卒中後遺症、脊髄損傷、加齢などによる過活動膀胱

腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)

● 特徴・症状 ●
尿意に関係なく、力んだ時(咳、クシャミ、スポーツ)にもれる状態。

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
普通にぶい160209_5

● 原因 ●
出産、肥満、加齢などによる真性腹圧性尿失禁

溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)①

● 特徴・症状 ●
膀胱の中に尿が満杯になっても出ないため、尿道より溢れ出てしまう状態。ひどい頻尿として自覚することが多い。尿意の低下が特徴

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
力がない普通160209_6

● 原因 ●
糖尿病、子宮癌術後などによる低活動膀胱

※「溢流性尿失禁」は2002年の国際禁制学会で定められた用語基準では推奨されていない用語ですが、日本では使用されることがあります。

溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)②

● 特徴・症状 ●
膀胱の中に尿が満杯になっても出ないため、尿道より溢れ出てしまう状態。ひどい頻尿として自覚することが多い。排尿困難が進んだ状態

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
普通興奮する

● 原因 ●
前立腺肥大症など

※「溢流性尿失禁」は2002年の国際禁制学会で定められた用語基準では推奨されていない用語ですが、日本では使用されることがあります。

全尿失禁(ぜんにょうしっきん)①

● 特徴・症状 ●
膀胱に尿がたまらないでダラダラもれる状態。膀胱が萎縮した状態

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
融通がきかない普通

● 原因 ●
脊髄損傷、子宮癌治療後で萎縮した状態、カテーテルの長期留置

全尿失禁(ぜんにょうしっきん)②

● 特徴・症状 ●
膀胱に尿がたまらないでダラダラもれる状態。尿道括約筋が働かない状態

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
普通力がない

● 原因 ●
脊髄損傷、子宮癌治療後で萎縮した状態、カテーテルの長期留置、二分脊椎、尿道の術後などの内因性括約筋機能不全

機能性尿失禁(きのうせいにょうしっきん)

● 特徴・症状 ●
膀胱や尿道の障害はないが、身体機能に障害があり、トイレへの移動や下着の着脱ができないために失敗してしまう。

膀胱の状態尿道の状態膀胱と尿道の状態
普通普通

● 原因 ●
老化や脳卒中後遺症などにより、移動能力や日常生活動作に支障をきたした人

排尿困難について
おもらしとは別に、オシッコが出にくい状態のことを「排尿困難」といいます。出始めまでに時間がかかる、尿に勢いがないなどの症状がある場合は「排尿困難」の可能性があります。

尿失禁について詳しくはコチラをご覧ください